2025年10月18日、特別企画として「米田あゆJAXA宇宙飛行士と学ぶ宇宙医学入門 ~宇宙産業と医療最先端の町・ヒューストン(米国テキサス州)から~」をテーマにウェビナーを開催しましたのでご報告致します。

 今回の企画は、米田あゆJAXA宇宙飛行士が外科医のバックグラウンドを持っているきっかけで実現に至りました。アメリカ在住の方だけではなく、日本の医師・医学生、さらに宇宙に興味を持つ一般の方に広くご参加いただき、総参加者は900名を超える大盛況のウェビナーとなりました。

 はじめに、米田さんの自己紹介がありました。「自分の手や身体を動かして子供たちの夢を繋ぎたい」という思いで小児外科医として研鑽を積んでいた中、宇宙飛行士の募集があることを知り、「自分の知らない世界を知りたい」という気持ちから選抜試験にチャレンジ、見事に宇宙飛行士になる夢を叶えました。悩んだら迷わず挑戦するという米田さんのチャレンジ精神、そして「子供の頃の自分に背中を押してもらった」という言葉に勇気付けられた方も多かったのではないでしょうか。そして、米田さんが今実際にどんな訓練を行っているのかを紹介頂きました。知識面だけではなく、着衣での水泳訓練やカメラ・動画撮影の訓練、低圧環境の体感や宇宙食の試食など、多岐に渡る訓練の様子を紹介いただきました。なかなか見ることができない訓練の様子を垣間見ることができ、とても興味深い内容でした。

 それから、宇宙医学に関しては、宇宙という特殊な環境を生かして、多岐に渡る研究が行なわれていることを紹介頂きました。新薬の開発・健康長寿に関する研究や、材料・物質科学、燃焼科学など、宇宙で得られた知見が地球上でも大きく役立っていくとのことで、これからの研究成果がとても楽しみです。国際宇宙ステーション(ISS)についても詳しくご紹介を頂きました。地球から遠く離れた閉鎖環境、宇宙放射線のリスク、微小重力の極限環境など、特殊な場所に滞在することで身体にどんな影響が出るのか、宇宙飛行士の体は地球からモニターされ、身体面だけではなく精神心理面においてもしっかりとサポートされています。おもしろい話として、微小重力環境では、足の裏に負荷がかからないため、皮がつるつるになる、とのエピソードが印象的でした。

 さらに、今後の宇宙医学に関して、人はより遠く月や火星へと到達し、さらに老若男女、健康な人だけではなくがんサバイバーやパラアストロノートが宇宙へ行く時代となります。民間企業の開発や宇宙旅行など、ますます宇宙が身近なものとなっています。そして更なる医学課題やニーズが生まれ、多くの知見が集まることによってますます解明が進んでいくことになります。これから先の発展に、ワクワクしますね。

 講演後の質疑応答では、100を超える多数の質問が寄せられ、皆さんの関心の高さがうかがえました。その中で、「ISSという閉鎖環境でチームビルディングを行うにあたり、心がけていることは?」という質問については、「リーダーシップを発揮し、また相手の良いところを見つけていくのが秘訣」とのお話を頂き、私たちの普段の生活にも共通する点だなと感じました。また「宇宙でやりたいことは?」との質問については、「無重力空間で、どこにも触れずにただ漂ってみたい。また、宇宙から地球をこの目で見てみたい」とお答えいただき、宇宙を目指す人にしか体験できない、とても素敵なコメントだなと思いました。

 今回のウェビナー後のアンケートでは、非常に多くの感想を頂き、「とても貴重な話が聞けた」「米田さんのチャレンジ精神、意思の強さに励まされ、勇気と元気をもらった」との声が多数寄せられました。また、米田さんへのコメントとして「アサインされるのを楽しみにしています」「これからもずっと応援します」との声がたくさんありました。

今回、訓練でお忙しい中特別ウェビナー登壇を快諾頂いた米田宇宙飛行士、本当にありがとうございました。これからの活躍を期待しています!今回は特別ウェビナーのため、録画やスライドの公開はありませんが、この報告記事で少しでも当日の様子を感じて頂けたら幸いです。