名前喜舎場 朝基
所属公益財団法人田附興風会 医学研究所 北野病院
訪問期間2026年3月24日~4月3日
ヒューストンを訪問した理由・動機私がヒューストンを訪問した動機は、海外の医療現場に触れることで感染症診療への理解を深めるとともに、臨床に対する視野を広げたいと考えたためです。これまで研修を通して抗菌薬や血液培養について学んできましたが、感染症科の日常診療を体系的に学ぶ機会は限られていました。また、米国ではPhysician-Scientistの概念が広く浸透しており、臨床と研究をどのように両立しているのかを実地で学びたいと考えました。今回、テキサス医療センターの複数施設において、レジデントやフェローとともにラウンドおよび外来見学に参加し、米国における感染症診療の実際と教育体制への理解を深めることを目的として参加いたしました。
滞在中に学んだこと 滞在前半は、Houston Methodist Hospitalにて兒子先生のご指導のもと、移植後感染症について学びました。これまで移植患者さんを診療する機会は限られていましたが、同院では心臓や腎臓を含む同時移植症例も多数入院しており、移植臓器ごとに免疫抑制療法が調整されること、特に同時移植ではより強い免疫抑制に合わせた管理が行われることを学びました。また、薬剤耐性菌として従来はMRSAを主に想起していましたが、移植患者ではStenotrophomonasなども重要な起因菌となり得ることを知り、鑑別診断の幅を広げる必要性を実感しました。さらに、Bedside teachingを通して、感染症コンサルト症例であっても深部静脈血栓症(DVT)などの非感染性疾患を常に念頭に置き、全身を丁寧に診察する姿勢の重要性を学びました。General Infectious Diseaseチームのラウンドでは、市中感染症に加え、HIV関連の日和見感染症も数多く経験し、免疫抑制下における感染症管理の難しさと重要性を再認識しました。
また、福田先生の外来にも見学の機会をいただき、創傷管理について学びました。外来のみならず自宅でも創部ケアを患者さん自身で行う必要があるため、視覚資料を用いた患者教育が積極的に行われており、患者理解を深める工夫が印象的でした。
後半はMD Anderson Cancer Centerにて松尾先生のもと、主にリンパ腫患者さんにおける感染症診療を学びました。化学療法中は、日和見感染症から誤嚥性肺炎まで幅広い病態に対応する必要があり、血液培養の解釈(コンタミネーションの判断や再検査の適応、陽転化時間の意義)や、肺炎・尿路感染症といったcommon diseasesに対する抗菌薬選択の考え方を体系的に学ぶことができました。さらに、国際色豊かなフェローと交流する中で、IMGとして米国でキャリアを築く過程や、自身の強みをどのように形成していくかについても考える貴重な機会となりました。
また、ラウンド前のテーブルディスカッションや合同カンファレンスでは、臨床推論の深さと知識の広がりに触れました。例えば、血液悪性腫瘍患者さんにおいて動物曝露歴を確認する意義や、血液培養陰性となり得る起因菌の鑑別など、日常診療に直結する知識を多く学びました。診療の場では、患者さんへの丁寧な説明と信頼関係の構築が重視されており、問診・身体診察を通じて全身状態を総合的に評価する姿勢が徹底されていました。
本見学を通じて、テキサス医療センターという世界有数の医療環境において、疾患的にも社会的背景においても多様な患者さんに接する機会を得たことは極めて貴重な経験となりました。本機会を賜りました日本テキサス医学振興会(JMTX)の先生方に心より御礼申し上げます。
ヒューストン生活滞在中は、テキサス医療センター近くのHyatt House Houston Medical Centerに宿泊しました。病院までは徒歩約20分で、運動がてら毎日歩いて通勤していました。施設内にはプールやジムが完備されており、また毎朝ビュッフェ形式の朝食が提供されるなど、快適な環境の中で研修に集中することができました。
滞在中には、八木先生にSpace Center Houstonに連れて行っていただきました。先生は館内の展示について随所で解説してくださり、単に見学するだけでなく背景にあるストーリーを理解しながら回ることができた点が印象的でした。想像以上に規模の大きな施設であり、アメリカの宇宙開発の歴史を実感できる貴重な機会となりました。
また、ヒューストンはメキシコに近い地理的背景もあり、食文化の多様性が非常に印象的でした。現地の先生方にお食事にお誘いいただき、テキサス・メキシコ料理店にてナチョスなどを楽しみました。いずれもボリュームが大きく、特にマルガリータのサイズには驚かされました。さらに、ベトナム料理をはじめとするアジア各国の料理店も多く、ヒューストンが多文化都市であることを実感しました。
加えて、食事の場では先生方のこれまでのキャリアについてのお話を伺う機会にも恵まれ、自身の将来の進路について改めて見つめ直す貴重な契機となりました。日本とは異なるキャリア形成のあり方に触れ、多様な選択肢を具体的に考えるきっかけとなったことも印象に残っています。
日本食が恋しくなった際には Tamashi Ramen & Sushi を訪れ、豚骨ベースのラーメンに癒やされるなど、異文化の中での生活も充実したものとなりました。
宿泊先Hyatt House Houston Medical Center
コメントヒューストン在住の日本人の先生方ならびに見学先の先生方のご指導のもと、感染症診療に関する知識を深めるとともに、米国の臨床現場への理解を深めることができ、非常に充実した経験となりました。今回得た学びを今後の臨床に活かし、さらなる研鑽に努めてまいりたいと考えております。最後に、貴重な機会を賜りました日本テキサス医学振興会(JMTX)の先生方をはじめ、ご支援いただいたすべての皆様に心より御礼申し上げます。