
| 名前 | 陣林 貞紀 |
| 所属 | 長崎大学医学部6年 |
| 訪問期間 | 2026/2/27-3/4 |
| ヒューストンを訪問した理由・動機 | 米国の医療現場で活躍されている先生方のご指導のもと、医師としてのキャリア構築の参考とするためです。加えて、世界最先端かつ最大級のテキサスメディカルセンターで直接学ぶことで、日本の医療現場が取り入れるべき点を考察し、将来的に何らかの形で国内の医療へ還元することを目標としました。 |
| 滞在中に学んだこと | 生駒先生、松尾先生のご指導のもと、MD Anderson Cancer Center(MDA)にて各科外来見学および手術見学の機会をいただきました。また福田先生のもとでBen Taub Hospital Osteomyelitis Wound Clinicの外来を、さらに兒子先生のご案内でHouston Methodist Hospitalの病棟・検査室・オフィス等、院内全体の見学をさせていただきました。 米国の医療ではNurse Practitioner(NP)やPhysician Assistant(PA)、Physical Therapist(PT)など多職種による分業が進んでいることは以前から耳にしていましたが、実際に現場で感じたのは、単なる「分業」ではなく、各職種が高い専門性をもって役割を全うしながら、密なコミュニケーションのもとで一つのチームとして患者診療にあたっている点でした。例えばNPが医師に先立って丁寧に問診を行うことで、医師が拾いきれない情報を補完し、結果として診療の質や患者満足度の向上につながる仕組みになっていると感じました。上記の印象をより強くした出来事として、MDAで複数診療科合同の手術中に患者さんの緊急事態が発生した際、麻酔科を中心に外科医・他職種が即座に連携し、迅速な判断と対応により危機を回避し、救命に至った場面がありました。この経験から、もし自分が外科医としてその場に立つなら、現状把握能力に加え、麻酔科医や他職種への適切な指示、日頃からの信頼関係を支えるコミュニケーション、そして治療方針の転換を即断する力など、総合的な臨床能力が問われることを痛感しました。 また、感染症という領域一つをとっても、移植関連感染症、一般感染症、免疫不全患者の感染症など、多様なサブスペシャリティが存在している点は日本と大きく異なると感じました。その中で先生方が共通して強調されていたのは、「ニッチな領域を見出し、そこで唯一無二の価値を発揮する」という姿勢でした。医療を一つの“価値提供”として捉えたとき、自身の興味関心と未開拓領域(ブルーオーシャン)を掛け合わせ、専門性を磨き続ける姿は大変参考になりました。加えて、英語力に不安を抱える自分にとっても、言語以上に「患者の問題を解決したい」という強い意思と、十分な知識・経験に裏打ちされた診療姿勢が、患者さんやご家族からの信頼と感謝につながっていることを目の当たりにし、医師として最も大切な軸を再確認できました。 医師の働き方については、外科領域では土曜日も手術が行われるなど労働時間が長い側面があり、単純に日本と比較して優劣をつけられない現実もあると感じました。一方で米国では成果が報酬に反映されやすい仕組みがあり、また患者担当をチームで分担することで、休暇や私生活の時間を確保しやすく、オンとオフの切り替えが明確である印象を受けました。 研究面では、潤沢な資金のもと世界中から優秀な研究者が集まり、大規模なラボと最新機器を用いて研究を推進できる環境が非常に魅力的でした。臨床現場でもDa Vinci 5が複数台運用され、遠隔地との手術画面のリアルタイム共有や触覚機能など、その技術には驚かされました。中でも、技術面で日本との大きな差として強く感じたのは電子カルテの利便性です。こちらでは院内PCだけでなくスマートフォン等の端末からも閲覧・記載・オーダーが可能で、高精度の音声入力により記載効率も高いだけでなく、患者側も自身の情報を閲覧し、医療者へメッセージを送れる仕組みが整っています。さらに重要なのは、多くの病院でEpicが広く導入されており、他院受診歴、かかりつけ医、処方管理状況などの情報共有が容易である点です。これにより無駄な検査や治療の抑制につながり、患者満足度の向上だけでなく、医療者の業務負担軽減やQOL向上にも寄与し得ると感じました。制度や人的努力のみでは解決が難しい課題に対し、テクノロジーを大胆に活用して医療の質と効率を同時に高めようとする米国の戦略を象徴的に示す領域だと感じました。 学んだことの中で最も重要だと感じたことの一つは、「常に挑戦する」ことです。ヒューストンで出会った方々は皆、米国に飛び込み、新たなゴールを常に模索しながら挑戦し続けている方ばかりでした。私自身も医師として、そして一人の人間として、このようにありたいと思える方々に出会い、日本では見えなかった世界を示していただいたことで大きな刺激を受け、非常に実りの多い研修となりました。研修への参加を可能にしてくださったJMTXの先生方をはじめ、関係者の皆様、家族、そしてお世話になったすべての方々に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。 |
| ヒューストン生活 | 宿泊先やメディカルセンター周辺は比較的治安が良く、安心して生活できました。一方で、滞在中に米国によるイラン攻撃が始まったこともあり、別の地域でテロの可能性も取り沙汰される銃乱射事件が起きたという報道もあったため、なるべく一人で歩かないよう心がけました。ホテルと病院の往復はシャトルバスが運行していたので、主にそれを利用しました。また、メキシカンをはじめ美味しい料理が多く、毎日食事に飽きることなく過ごせました。ちょうどRodeoが開催されており、平日の病院見学後にJMTXプログラムで知り合った友人と巨大なスタジアムで観戦できたのも良い思い出です。ジョンソンスペースセンターも訪問し、宇宙産業の盛り上がりや日本人の尽力に触れるとともに、この先100年単位の未来に思いを馳せるなど、非常に充実した週末を過ごすことができました。 |
| 宿泊先 | Latitude Med Center Apartments |
| コメント | JMTXの先生方のお取り計らいで、ヒューストンに滞在されている日本企業の方、研究留学中の先生方、弁護士の方など、さまざまな方からお話を伺い、自分の視野を広げることができました。特に、米国レジデンシーにマッチされた比較的学年の近い先生方からキャリア構築について直接伺えたことは、自分の将来を見つめ直す大きなきっかけとなり、今回の滞在で最も大きな収穫の1つでした。 |
