最近、ふとしたことから街角の小さなアージェントケアークリニック(Urgent Care Clinic)で短期のアルバイトをすることになった。しばらくアージェントケアーからは遠ざかっていたのだが、やってみるとなかなか面白い。というのは、緊急病院(Emergency)のように夜勤がないので、生活が規則的になり体調がすこぶる良い。その上、緊急病院のように生死に関わるような重体の患者さんはほとんど来ないので、医療ミスで訴えられることはほとんどない。だから、そういったストレスもあまりない。また、いろいろな病気や怪我を患った方が来られるので、普段専門的な病気だけを扱っている私にとって、昔医学部で学んだことを見直さなければならず、とても勉強になる。
ただ、困るのは本当にこの患者さんは緊急病院に行くべきなのにどうしてアージェントケアーに来たのかと首をかしげたくなるような病気や怪我を患った方も来てしまう。特に、胸痛や呼吸困難、または大けがをした患者さんが来た場合には、すぐに緊急病院に行くべきであるにもかかわらず、アージェントケアーに訪れるケースが少なくない。こういった状況は、患者さん自身がどの施設に行くべきか分からないことが原因である場合が多い。
そこで、どういう場合にアージェントケアーに行くべきなのか、またどういう場合に緊急病院に行かなければならないのかを説明したい。
どういう時にお医者さんに見てもらったらいいのかと言うのはほとんどの方がご存知だと思う。痛みがひかない時や風邪をひいて二、三日たっても良くならない時、怪我をした時や、何かちょっと不安になった時などはお医者さんに相談すべきだと思う。アーゲントケアーや緊急病院のいいところは予約が不要ということだ。プライマリケアーと言われる医院では、長期にわたる病気の時は必要なのだが、次の予約まで2〜3ヶ月待ちはよくある話だ。
ではまず、どうしてアーゲントケアーでいい場合はアーゲントケアに行ったほうがいいのだろうか。少なくとも次の3つの利点が考えられる。
1、費用
アーゲントケアの最大の利点は、とても料金が安いことだ。下記のグラフを見ていただきたいのだが、緊急病院はとても費用がかさむ。例えば、ちょっとした喉の痛みで緊急病院に行くと526ドルかかってしまうのだが、アーゲントケアーに行けば127ドルと節約できる。いくら保険が効くからと行ってもこの差は大きい。また、救急車を呼ぶとなるとまた巨額の金額を後々要求されるので、慎重に行動されることをお勧めしたい。
https://www.hendersonbrothers.com/er-vs-urgent-care-choosing-correct-treatment-option
ただ、費用に関して言うと、もし健康保険がないとしたら、そして、絶対に病院に行かなければならないなら、緊急病院に行くべきだ。もちろん、健康保険に入ることを強くお薦めしているので、万が一という時だ。というのは、ほとんどの緊急病院は生死に関わる患者は容態が安定するまでは、どんな患者さんも診なければならないという法律があるためだ。「健康保険は高いから入らず、病気になった時は緊急病院に行けばいいや」と行っていた日本人の友達がいたが、注意して欲しいのは、緊急病院では容態が安定してもし巨額の治療費が払えなければ、叩き出されるということだ。生死の境をさまようような時には診てもらえるが、一旦命に別条がないと判断されると、どんなに痛みがあっても、絶対に専門医に行かなければならない時でもそこで治療は終わりになるので、アメリカでは健康保険にはぜひ入っていただきたい。オバマケアーでは、もし健康保険に入っていなければ、2018年には、税の申告の時に695ドルか、一家の収入の2、5%かのどちらか高い方を政府に払うというペナルティーを課せられていた。ただこれはトランプ政権になったときになくなったが。
2、便利さ
アーゲントケアークリニックは便利な場所に点在していることが多く、気軽に立ち寄ることができる。私の働いたクリニックはウォールマート(Walmart)の斜め向かいのショッピングセンターの一角にあり、ちょっとした買い物がてらに予約なしでふらっと立ち寄ることができる。この手軽さは非常にありがたいと思う。
3、待ち時間
アーゲントケアーでは、比較的すぐにお医者さんに見てもらえる。私の働いた病院では患者さんは普通15分ぐらいで、最高でも30分ぐらいで医者に診てもらえる。一方、緊急病院では長時間待たされるのは当たり前で、数時間待ちもよくある。だから、ちょっとした病気や怪我であればアーゲントケアーに行くことを強くお勧めしている。
アーゲントケアーと緊急病院の使い分け
では、どういう病気や怪我の時にはアーゲントケアーに行き、どういう時には緊急病院に行かなければならないのか。ここで、下記のアーゲントケアと緊急病院を比べたイラストを見ていただきたい。ここでは、どういう時にアーゲントケアーに行って、どういう時に緊急病院に行かなければいけないかを簡単にまとめてある。
アーゲントケアーで十分なケース
1.目や耳の感染症
2.発熱
3.ちょっとした縫合が必要な怪我
4.骨折したかもしれない時や、単純な骨折の場合
5.耐えられない喉の痛み
6.足首を捻ったり痛めたりした時
7.下痢と嘔吐
ただし、このリストには例外もあり、新生児(生後1年)や幼児の発熱、妊婦のお腹の痛みなどの場合はすぐさま緊急病院に行かなければならない。
では、どういう時には直接緊急病院に行くべきなのか。
緊急病院が必要なケース
1.胸の痛み:生命に関わる心臓の疾患が疑われる場合は速やかに緊急病院へ。
2.てんかんや意識を失った時:脳出血や重大な神経障害の可能性がある。
3.重度の腹痛:盲腸破裂など命に関わる可能性があるため注意。
4.ストローク(脳卒中)の症状:ろれつが回らない、片側の手足が動かないなどの症状が現れた場合。
5.出血が止まらない時:輸血や止血が必要なケース。
6.何日も食べ物や飲み物が受け付けない時:点滴治療や抗生物質の注射が必要な場合がある。
とにかく、脳や心臓といった直接命に関わる器官の症状が出た時にはすぐさま緊急病院に行くことをお勧めする。ただ、クリスマスや新年早々は人々が浮かれパーティーなどが多く、病気や怪我が多く、緊急病院はいっぱいになる。そういった祝日は病院が忙しいのを知っているので、医者もできるだけ避けるようになる、つまり休暇を取ることもある。だから、アーゲントケアーで済ませられる時を十分理解し、そういった時はアーゲントケアーに行くことをぜひお勧めしたい。ただ緊急病院は24時間休みなく空いているが、アージェントケアは休日があるかもしれないので時間の確認も忘れずに。