先月は、規則正しい生活が健康に大切であると書きましたが、日本にも「早起きは三文の得」など、早寝早起きを奨励することわざがありますよね。今回は、話題をがらっと変えて、犬を飼うことによって健康が促進されることについて書いてみたいと思います。
私は、この度犬を飼うことにしました。多忙な生活の中、「犬を飼うなんて大変だ」と周りの人々は反対しましたが、その反対を押し切っての決断です。それには少し事情があります。以前お話ししたように、外科医の研修を諦めて専門を変えることになった時期がありました。外科医の研修は肉体的にも精神的にも大変だったので、変えて良かったと思う一方で、初心を貫けなかった自分に落ち込み、辛い時期を過ごしたことがありました。
その時、たまたま犬を飼っている大家さんの家に引っ越すことになり、大家さんが不在の時にその犬を預かることがありました。犬と遊ぶことで、心が少しずつ癒されるのを感じました。犬と時間を過ごす中で、私はいろいろなことを学びました。犬は、どんなに落ち込んでいても、怒っていても、数分後には忘れたようにじゃれ合いに来ます。その無邪気な姿に何度も助けられました。
私はクリスチャンですが、犬を英語で後ろから読むと「god」の反対は「dog」ですよね。神様が私たちを愛されるように、私たちも犬を愛する本能が備わっているのではないか、とその時思い始めました。
その後、また新しい土地に引っ越した際、隣の家で犬を飼っているのを知りました。その犬はとても食欲旺盛で、私が餌を与え始めると、毎朝私が起きるのを玄関先で待つようになりました。そして、私に会うのを楽しみにしてくれているようでした。その姿に私も朝起きる張り合いができ、とても嬉しく思いました。
ところが、ある日突然、その犬が姿を消したのです。隣の人に尋ねると、「保健所に連絡して引き取ってもらった」とのことでした。犬が妊娠していて、大きくなった犬が邪魔になったというのが理由のようです。私はあまりのことに悲しくなり、同時に犬を捨てた隣人に怒りを覚えました。
そこでいろいろなところに連絡を取り、やっとの思いでその犬が数時間離れた犬専用の保護施設に保護されていることを知りました。その犬のために何かしたいと思い、保護施設に寄付金を送り、「いつか必ず引き取りに行く」と連絡を入れました。しかし、その当時の大家さんは犬を飼うことに反対で、何度も話し合いました。
最近になって、私の隣のアパートに犬を飼っている人が引っ越してきたことで、大家さんも折れてくれ、ついに私も犬を飼うことが許されたのです。
その時にいろいろリサーチをして、犬を飼うことによる健康への効用について勉強したことを、今お話ししたいと思います。
最近アメリカでは、犬を連れてきてもいい職場もたくさん出てきているそうです。2015年の統計によりますと、8%のアメリカの職場で犬を連れてきてもいいそうで、2013年の5%から上昇しています。アメリカ屈指の情報ウェブサイトGoogleなどがその一例です。
また、アメリカ人の中にはうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)、不安障害といった精神的な病気に冒されている人がいますが、犬はその症状を和らげるための治療として使われ始めています。例えば、元軍人の方々は職業柄、PTSDの割合が高いそうで、そういった方々の治療として犬が活用されています。このような治療に使われる犬(セラピー犬)は、飼い主が犬のための別途料金を払わずに飛行機で旅行できたり、家を借りることが出来るといった特別な制度もあります。
その他にも、犬の効用に関する研究が進んでおり、犬は心臓疾患や睡眠障害にも有効だということがわかっています。例えば、犬を飼っている人は飼っていない人に比べて10年長生きするという研究結果も発表されています。また、ある研究では、犬を飼っている人が心筋梗塞の後に1年以上生きる確率が94%だったのに対し、犬を飼っていない人は74%と、ずいぶん低かったそうです。さらに、犬を飼っている人は運動量が多く、老後も健康でいられる割合が高いということがわかっています。犬を飼っている人は一般的にストレスも低い傾向があるとのことです。
最近では、盲導犬だけでなく、糖尿病患者や癲癇(てんかん)を予知する犬など、幅広い分野で犬が私たちの生活に役立っています。
ただし、犬の飼い主には多くの責任が伴います。例えば、犬に餌を与えたり、獣医さんに連れて行って予防接種を受けさせるといった金銭的な負担や、人に迷惑をかけないように犬を訓練するといった社会的な責任です。また、犬が犯した過失は飼い主の責任になります。まるで子供を育てるような責任感が必要になるでしょう。
それでも、犬は人生に生き甲斐や張りを与え、健康を促進する存在であることに変わりありません。もし可能であれば、犬を飼ってみることは健康促進に良い選択かもしれませんね。