病院見学の感想・一柳 咲佑美さん

一柳 咲佑美さん(亀田総合病院初期研修医2年)

名前一柳 咲佑美
所属亀田総合病院初期研修医2年
訪問期間2023年9月30日〜10月27日 そのうち1週間はボストンでの国際学会に参加)
ヒューストンを訪問した理由・動機亀田の1ヶ月間の海外研修の期間を利用して訪問させていただきました。感染症は医学生の時から興味があり感染症トレーニングが最も進んでいるアメリカでどのような医療がなされているのか、日本とアメリカの医療実際の違いなどを知るためアメリカでの実習を希望しました。
学生時代にPittsburgh大学病院は見学したことがあり、アメリカ北西部の病院と雰囲気がどう異なるかも気になっていたため、アメリカ北西部以外の病院を探していたところ、亀田でお世話になっている感染症科の先生が兒子先生と繋げてくださり研修が実現しました。
また将来海外で働くことを含めて今後自分がどのようにキャリアを歩んでいきたいかを研修やそこで会う人々を通して考えたかったのも研修に参加した目的の一つでした。
滞在中に学んだことHouston Methodist Hospitalは固形臓器移植センターとして全米トップクラスの実績を誇っており2023年に累計臓器移植が1万件に到達するほど移植医療が盛んな病院です。亀田では固形臓器移植の症例を見たことはありませんでしたが、心臓移植前のLVAD感染や腎移植後の腸球菌感染症など多くの移植感染症を診ることができました。またヒューストンの人種、移民、貧富の格差などがもたらす多様性により、AIDS疾患やmadura footなど日本では滅多にないような症例や、病院によって来院する患者層がまるで違うことに驚きました。PittsburghでのLyme病、ヒューストンでのCoccidioidomycosisといったアメリカ国内の地域性の違いを感じれたのも良かったです。
感染症診療として感じた日本との違いとしてはコンサルトの閾値が非常に低く、抗菌薬の治療方針が立つとすぐにサインオフとなり患者の入れ替わりが激しいこと、IVからper oralへの切り替えも早く入院期間が短いこと、ウイルスのPanelなど診断ツールが充実していることなどです。抗菌薬の初期治療においてグラム染色を使用することはほぼないようで、microの知識は日本人の方が強いなど日本のいい面を感じることもできました。
また日米の医療の違いも多く感じました。銃を病院に持ち込まないように金属探知機が病院のエントランスにあったり、刑務所からの患者が警察の監視下におかれながら診察されていたりとアメリカならではの光景がありました。また病院の至る所に絵画があったり、音楽が流れて装飾もとってもPOP な空間の透析センターや、ハロウィンの時期だっため病棟の至る所がハロウィンのデコレーションされており病院内の雰囲気の違いも感じました。ハード面としては、カルテがどこでもアクセスでき、ディクテーションでカルテ入力ができることから時間削減ができること、同じ会社のカルテであれば他の病院のカルテを見ることができること、安定した患者であれはビデオ外来ができるなどIT面においては遥にアメリカの方が進んでいるなと感じました。人種の多様性があるヒューストンにおいて、オンライン通訳や音声通訳サービスなどは日々の診療のなくてはならない存在でした。
ヒューストン生活の感想私は10月に研修をしたため気温は27〜30℃でいわゆるヒューストンのベストシーズンで大変過ごしやすかったです。街はハロフィン尽くしで、お家の庭にもジャコランタンやおばけの飾りなど街を歩いているだけで楽しかったです。
病院までは毎日Metro(バス)で通っていました。バスは日中であれば治安は問題なく運賃も1.25ドルでUberより遥かに安かったためお財布には優しかったです。ただ道の舗装が悪くバスはかなり揺れます(笑)日が暮れてからは治安があまり良くないと聞いたため、Uberで移動していました。
食事は基本的はホストファミリーと一緒に家で食べることが多かったですが、Tex-MexやTaste of Texasをはじめとしたステーキなど、どれも美味しかったです。
休日はホストファミリーや研究室の日本好きの子とSpace Center HoustonやPOST Houston,Color Factory Houstonに行きました。木曜日は入場料が無料になり夜遅くまで空いているmuseumも多いためおすすめです。他にも日本人のチェロ演奏家さんのご縁でHouston Operaの鑑賞などもしました。
中でも思い出に残っているのがホストファミリーや近所の方中心に開いていただいた誕生日会とお別れパーティーです。青やピンクのクリームのいかにもアメリカなケーキをいただいたこともいい思い出です。パーティーでも、コメディアンや太鼓パフォーマーなど新たな人との出会いがあり人とのご縁の素晴らしさを感じた1ヶ月でした。
宿泊先当初はbooking.comで病院から徒歩20分ほどのマンションの1角にある部屋を予約していましたが、連絡のレスポンスがあまりにも遅いため本当に宿泊できるのか不安が募っていきました。また円安とインフレで宿泊費が予算オーバーになっていたため、兒子先生にご相談させていただき、ヒューストン日本人会にホームステイさせていただけるご家庭がないか探していただくことになりました。結果的に病院からバスで30分ほどの日本人ドクターのご家庭が受け入れてくださることになり、家族の一員として接していただき最高の1ヶ月を過ごすことができました。アメリカの小学生の日常も見ることができて良かったです。
コメント毎日感染症の面白さや日米の医療の違いを発見して、とても刺激的で有意義な時間でした。多くの方々に出会い、言葉を交わし人との出会いや縁が人生を豊かにしていくものだなと強く感じました。Houston Methodist Hospital以外にもTMCの他の病院も数日ずつ見学させていただき兒子先生、松尾先生、福田先生、忍先生、そして亀田の大澤先生本当にありがとうございました。改めましてこの場をお借りしてお礼申し上げます。
今後もこのご縁を大切にしていきたいと思っています。何か私がお手伝いできることがありましたらいつでもお声がけください。