Houston Methodist 病院見学記 4週目

神戸大学 6回生 沼 知里

 神戸大学6回生の沼 知里です。JMTX奨学金にご選出いただき、Houston Methodist Infectious Diseases (ID)でObservershipをさせていただいております。とうとう最終日が来てしまい、泣く泣くバッジをお返ししました。。。年間600件の臓器移植が行われるここHouston MethodistのIDでこれまで目にすることのなかった多くの感染症を経験させていただくことができました。Histoplasmosis、Mucormycosis、Candida Aureus、Strongyloides stercoralis、Post-transplantation CMV viremia、BK viremia、Candidemia、、、

 兒子 真之先生には医師そして感染症内科医としての考え方、患者さんとご家族の心のケアを時に言葉で時に言動を通じてお教えいただきました。印象深かった出来事の1つに「感染症診療(一般診療でも)はContinuityを保って患者をみることが大切。」とおっしゃっていて、一人の患者さんを長く診ることで、最初にした治療における判断が正しかったかを後から振り返ることができるそうです。特に移植後感染症においては拒絶反応予防の免疫抑制と感染症の予防や治療がコンフリクトすることがあります。そのような場合、ガイドラインの示す正解がはっきりしない中での治療選択は難しいそうですが、経過を長期的に診ることでベストな治療選択をしたかどうかを追究されるご姿勢に大変感銘を受けました。ご研究についてもお教えいただくことができ、発症前後の時間経過を含む医療情報を用いた重症化リスクと治療必要性の評価にシークエンシャルなAI言語モデルの構造を応用されるご発想に大変感銘を受けました。

 福田 由梨子先生にお世話になり、Ben Taub Hospitalの見学もさせていただきました。ここは経済的、法律的に保険に入れない方、多くは不法移民の方々に医療を提供する地方自治体運営の病院です。糖尿病性足壊疽や壊疽性膿皮症、うっ滞性静脈炎の症例に出会いました。10cm以上の潰瘍があるなど随分悪化していて、高額な医療費の請求を恐れてなかなか受診されないことをお聞きし胸が痛みました。福田先生は糖尿病性足壊疽の患者さんに対し、創傷予防とケアのビデオ教育が有効か調べられていて、患者さんのQOLに直接作用する重要なご研究に大変感銘を受けました。

 4週間の見学を通じて日米の医療の違いを感じ取ることもできました。日本の医療においては国の経済負担が大きく持続可能でないこと、医療従事者への還元が少なく重労働の診療科を選ぶ医師が減っていること、新規治療開発を含む研究資金が少ないことが問題です。アメリカでは個人が負担する医療費が超高額で欠点もありますが、医療経済をよくし重労働の診療科ほど収入を上げ、研究資金を確保するためには仕方がないのかもしれません。アメリカにもセーフティーネットが存在し、無保険の人が所得に応じた低価格で医療を受けられるよう地方自治体が運営している病院があることを来て初めて知りました。他方、日本の医療の良い点として、保険制度、フリーアクセスに加え、ジェネラリスト重視の教育や国民的気質である慎重さが医療の質を高めていることに気づく場面があり、アメリカでもホスピタリストやナースプラクティショナーがもう少し患者さんとコミュニケーションをとり、リーダーシップを発揮する方がよいのではないかと感じることもありました。逆にアメリカの医療から日本に取り入れたいと思ったのは合理性で、電子カルテ内のチャット機能でコミュニケーションをとれたり、他科コンサルの垣根が低かったり、医師以外の医療職が専門性の高い技能を持ちフラットな関係性で連携しているところが素晴らしいと思いました。

 兒子先生に志望科であるNeurologyの見学もご調整いただき、先生方にアピール(?)するチャンスにも恵まれました。また4週間の病院見学を通して今後改善すべき自身の課題にもたくさん気づくことができました。これらの素晴らしい経験の数々はJMTX病院見学奨学金制度がなければ得られず、奨学金制度を発足していただき、奨学生としてご選出いただき心の底から感謝しております。本当にありがとうございました。

♢♢週末日記♢♢

 今週はJMTXの先生方にお食事会をしていただきました。先生方がレジデンシーにマッチされた経緯や渡米後どのように努力され現在のキャリアを築かれてきたかお聞きし、素晴らしい先生方に奨学生として選んでいただけたことを光栄に思いました。福田先生お勧めのタイ料理はどれもとても美味しかったです。ご招待いただきお馳走になり本当にありがとうございます。Houston Methodist NeurologyのNeuroscience Research Programディレクターでいらっしゃる芦澤哲夫教授にもご紹介いただきお会いする機会をいただきました。心より御礼申し上げます。

 最後の週末はエルサルバドル出身のID Research Assistant、Abyに案内していただき、Harman Park、Science Museumと郵便局をリノベした商業施設POST Houstonをめぐりました!!Science Museum は化学、生物学に始まり量子コンピューターや宇宙物理学、脳科学をゲーム感覚で楽しみながら学べるよう工夫された素晴らしい展示でした。アメリカ大陸の自然史や文化史も学ぶことができ、Butterfly centerでは蝶たちに癒されました。POSTでは美しいダウンタウンの夜景に浸り、ヒューストンとの別れを惜しみました。。。また訪れたいです♪