病院見学の感想・今村 泰輔
名前 | 今村 泰輔 |
所属 | 京都府立医科大学 消化器外科 |
訪問期間 | 2025年4月~7月 |
ヒューストンを訪問した理由・動機 | これまで肝胆膵外科医として、静岡がんセンターや大学病院にて臨床経験を積んで きました。今回、世界最高峰のがんセンターであるMD Anderson Cancer Centerにて、実際の臨床や手術現場をこの目で見て体験し、学ぶことを強く望んでいました。特に、同センターでロボット支援手術の第一人者として活躍されている生駒成彦先生の手術を直接拝見し、技術を学びたいというのが最大の動機でした。 |
滞在中に学んだこと | 当初の目的であった手術見学については、生駒先生の多くの手術を間近で見学する 機会をいただきました。日本の精緻な技と、アメリカの合理性・豊富なリソースが融合したその手術手技は、想像をはるかに超えるものであり、圧倒されると同時に感動しました。「これこそが、自分がこの先目指すべき手術である」と確信し、記録と記憶にしっかりと刻むことができました。 この手技をより多くの外科医に伝える必要性を感じ、僭越ながら私がロボット支援下 膵頭十二指腸切除術(RPD)における上腸間膜動脈周囲神経叢マネジメント戦略の 最適化、ならびにRPDにおける門脈合併切除の安全性と短期成績に関する論文をま とめさせていただきました。 さらに、研究の機会にも恵まれました。術後QOL評価に関するMDASI-UGI短縮版の 開発や、RPDにおける膵空腸吻合フェーズのAIによるスキル評価モデルの構築とい った先進的なプロジェクトに参画し、幸いにもデータがまとまり、現在は論文執筆段階に入っております。これらの成果は、単なる一つの研究にとどまらず、今後日米における多施設共同研究の種として発展可能なものであり、自施設および国内施設に橋 渡しできればと考えております。 |
ヒューストン生活の感想 | 病院内での活動は非常に充実したものでしたが、それに劣らずヒューストンおよびテ キサスの魅力にも深く魅了されました。 何よりも印象的だったのは、この地の「多様性を受け入れる寛容さ」です。人種構成において「誰も過半数を占めない」と聞いてはいましたが、それを実際に体感し、肌で多実感しました。差別的な空気は感じられず、人と異なることを自然に受け入れる雰囲気、そして人々の温かさが心に残っています。子どもたちにとっても、素晴らしい環境でした。さまざまな人種の友人とすぐに打ち解け、言語や文化の壁を越えて交流する姿を見て、親としてこの経験を提供できたことに深い喜びを感じました。 休日には、コマール川でのチュービングや、フォートワースでのロデオ観戦、地元アストロズの熱狂的な応援など、家族でテキサスならではの体験を多く楽しむことができました。わずか3ヶ月という短期間ながら、まるで5倍速で生きたかのような、濃密で幸福度の高い時間を家族全員で過ごせたと感じています。 |
コメント | この度の留学を実現させていただいた生駒先生には、心より感謝申し上げます。外 科医としての卓越した技術と知識はもちろんのこと、チームのリーダーとして、そして家庭を大切にされる一人の父親としての姿勢にも深く感銘を受けました。 ご本人には許可をいただいておりませんが、勝手ながら人生のメンターと仰がせてい ただいております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 また、JMTX奨学金という形でこの貴重な機会を支えてくださった福田先生ならびに関係者の皆様にも、心より御礼申し上げます。MD Anderson Cancer Centerでの経験が今後の日本の医療・教育の発展に寄与することを信じて、これからも努力を重ねていります。 |