先週の金曜日、クリニックで働いていた時のことです。32歳の白人の奇麗な金髪女性が患者として現れました。話をしているうちに、彼女は性病の検査をしてほしいということでここに来たようでした。理由を尋ねると、少し口ごもりながら、「旦那さんと一緒に来ているので、詳しいことはその旦那さんに聞いてほしい」とだけ答えました。 性病検査のオーダーをコンピューターに記入し、次の患者のところに行きました。
その人は38歳の白人のイケメンの男性でした。彼も性病の検査をしてほしいと言いました。どうしてかと尋ねると、「ここに僕の家内と一緒に来た。僕は浮気をしてしまい、僕たちはカウンセリングを受けている。彼女が気の済むように、何でも彼女の望むことをしてくれ」と悲しそうに言いました。 その人にも同じような検査をオーダーしました。
残念なことに、男性が浮気をした場合、女性のほうがより多くの迷惑を被ります。 男性の性病の検査は血液と尿を取って結果を待つのですが、女性の場合、膣中の体液を検査しなくてはいけないため、下腹部の検査が必要になるからです。
私には、この夫婦がどういったいきさつで旦那さんが浮気に至ったか全くわかりません。けれども、性病はとても一般的な病気で、アメリカの医療現場ではよく見るものです。 日本では、浮気など恥ずかしいこととされ、ひた隠しにされることが多いのですが、アメリカでは性病は一般的な病気なので、パートナーが他の人と浮気をした場合、性病検査をして感染していないか確かめることは健康を守る上で大事なことだと考えられています。
また、性病のテストは、男性と女性で少し異なります。上記に記したように、男性は血液と尿検査が一般的ですが、女性はそれに加えて、膣内の体液を取らなくてはならないことが多いのです。
性病の検査は、普通、血液検査と感染が疑われる体の部分の体液の検査からなります。エイズはHIV感染の重症時の呼び名で、HIVの検査は、指の血をチェックする「プリックテスト」と呼ばれる手軽なものから、血液を採血して抗原や抗体を検査するこみ入ったものまで、さまざまな方法があります。 以前はエイズは死の病として恐れられていたのですが、今では様々な薬が開発されており、有名なバスケットボール選手のマジック・ジョンソンのように、診断後何十年も元気に生きることが可能になりました。
梅毒の検査は血液を調べることで行われます。 トリコモナス膣炎やクラミジア、淋病は、男性の場合は尿、女性の場合は膣の体液を検査するのが最も正確です。 もし、これらのどれかの性病にかかっていると診断された場合には、医師が薬を処方します。薬は感染している病原体によって異なるため、必ず医師の指示に従ってください。
HIVやトリコモナス膣炎、クラミジア、淋病は、セックスパートナーも検査を受けることが必要になります。 ですから、このご夫妻の場合のように、奥さんも検査を受けなければならないのです。
ヘルペスは、肉体的な所見から診断されることも多いです。 というのは、ヘルペスは見た目にハッキリとわかるおできのようなものができるからです。ただ、見た目に症状が出ていなくても感染している場合も多々ありますので、注意が必要です。 これらに加えて、もし相手が感染している可能性が高い場合、B型肝炎やC型肝炎の検査を行うこともあります。 そういった場合は血液の抗原と抗体をチェックします。
医学部時代に、性病の授業の時、教授が、「愛とヘルペスの違いはなんだか知っているか?」と尋ねました。私たち医学生がポカーンとしていると、その教授は、「Herpes are forever(ヘルペスは永遠なり)」と皮肉たっぷりのジョークを言っていたのを思い出します。 ヘルペスにかかると、ウイルスが体の中に入り、一生住みついてしまいます。 体の免疫力が弱った時に突如として病気が復活するため、一生その病気と付き合わなければならないことになります。
それにしても、もし何かしらの性病に奥さんが感染していた場合、彼の浮気を許すことはもっと難しくなるでしょう。アメリカではどんな病気に感染するかわからないというリスクが常にあります。 肉体的な性病という、一生つきまとうかもしれない病気のほかに、旦那さんに裏切られたという精神的なダメージも、治療が非常に難しい問題だと思います。
どんなに奇麗な女性の誘惑を受けても、道徳心を守ることは家族の崩壊を防ぐだけでなく、性病といったかかわらなくても良い病気にまでかかわることを防ぎます。どうぞ、一時の快楽に溺れることなく、責任を持った行動を取るようお願いいたします。