タバコはアルコールに次いで2番目に世界で最も親しまれている嗜好品だが、皮肉にも死期を早めることでよく知られている。少なくとも世界中で1年に約500万人がタバコの害が原因で亡くなっている。アメリカでも20%の死亡原因がタバコに関わっていると言われている。ただ最近タバコの害が良く知られるようになってきたので、アメリカでも喫煙者の数がここ最近ずいぶん減っている。

アメリカの多くの企業では、建物中で喫煙することを禁止しているところが多く、喫煙者にとってはますます居心地が悪くなってきた。そんなことも喫煙者減少の原因かもしれない。

妊婦と喫煙

アメリカでは今日、十代の青少年の約1割が喫煙しているという。そして悲しいことに妊娠中でも約7%の妊婦がタバコを吸っていたとアンケートに答えている。特に妊婦が喫煙をすると、生まれた赤ちゃんに何らかの影響を及ぼすことが知られている。例えば、生まれてくる赤ちゃんが異常に小さかったり、流産したり、他にも様々な妊娠出産における害を引き起こすことが証明されている。だから妊娠したらぜひとも禁煙をお勧めする。

どうしても禁煙できない時は、どんな治療法があるのだろうか。カウンセリングが最も有効な治療法であると言われている。それでもどうしてもタバコが止められないときには、ニコチンパッチなどの薬もあるので産婦人科のお医者さんに相談することをお勧めしたい。また、特に授乳しているお母さん方にお伝えしたいのだが、ニコチンは母乳の中に入っていくので、授乳中のお母さんがタバコを吸っていると、赤ちゃんにニコチンを与えているのと同じことになるので気をつけたいものだ。

タバコの害

タバコには4800以上の有害物質が含まれており、その中には少なくとも11種類の発がん性物質が含まれていると言われている。そのため喫煙者は禁煙者と比べて約10年ほど寿命が短いと言われている。というのは喫煙はいろいろなタイプのガンを引き起こし、心臓にも悪影響を与え、その上、肺がんはもちろん、喘息などの他の肺の病気をも引き起こしてしまう。その他にも糖尿病や骨が急速にもろくなったり、消化器官の病気や肌の老化が進むなどいろいろな身体的な悪影響が知られている。

アメリカでは、喫煙の害は今では周知の事実なので公共機関もいろいろな禁煙対策を練っている。例えば禁煙運動を奨励する広告をメディアに出したり、タバコに高額な税金をかけたり、喫煙における年齢制限を設けたり、喫煙できない場所を法律で定めたりといった禁煙対策が至る所で見られる。

禁断症状

ではどうしてそんなに喫煙が体に悪いと分かっているのにやめられない人がたくさんいるのだろうか。タバコにはニコチンという中毒性の強い物質が含まれている。その上、タバコには集中力を増したり、機敏な脳活動を促進するといった『効用』もある。その他にも、情緒不安定を静めたり、少しながらも痛み止めの効果もある。その上、ニコチンには中毒性が強いので、禁煙を始めてから24時間以内に禁断症状が現れる。特にイライラしたり、情緒不安になったり、集中できなかったり、食欲が増して体重が増えたり、うつ病のような症状を引き起こしたり、夜眠れなかったりと、禁断症状は様々である。

タバコ中毒患者

ではどういう人が医学的にタバコ中毒患者と考えられるのであろうか。次の11の症状のうち少なくとも2つが当てはまると、タバコ中毒患者とみなされる。

  1. 長い間、莫大な量のタバコを吸っている。
  2. 喫煙量をコントロールすることができない。
  3. 喫煙するために大変な量の時間を費やしている。
  4. タバコを吸わないといてもたってもいられなくなる。
  5. タバコを吸うために仕事や学校、または家での責任を果たすことができなかったことがある。
  6. 社会的または他人との関わりの中で喫煙しているために悪影響を及ぼしたことがある。
  7. 喫煙するために大切な社会的、職業的または余暇の行事をあきらめたことがある。
  8. 寝たばこなどの危ない状況に身を置いたことが多々ある。
  9. タバコの害が肉体的または精神的に悪い影響を及ぼすとわかっているにもかかわらずタバコを止めることができない。
  10. 以前よりも多くのタバコを吸わないと、以前と同じようなタバコの効果が得られない。
  11. タバコを吸わないと禁断症状が現れる。

上記のうち、2つ以上当てはまったら、あなたも立派なタバコ中毒患者である。

治療法

ではタバコ中毒患者に対して、どういった治療法があるのであろうか。まず第一に、カウンセリングによって『習慣を変える』というアプローチがある。つまり、個人またはグループでのカウンセリングや電話でのカウンセリング、また最近ではアプリを使ったカウンセリングなどがアメリカではよく行われている。

では薬での治療法はどうなのであろうか。まず第一に、ニコチンのパッチやニコチンガム、またはニコチン飴などがある。また『ウェルビュートリン』や『チャンタクス』というれっきとした治療薬もあり、これらは禁煙に効果があると証明されている。

電子タバコ

最近は普通のタバコの他に、電子タバコと言われる装置でニコチンを吸うことができるようになった。電子タバコは、小さな電池によって作動し、電子タバコを吸い込むとニコチンを含む蒸気が出てくるという仕組みだ。最近の電子タバコの普及には目覚しいものがある。アメリカでは現在、少なくとも3%のアメリカ人が電子タバコを吸っていると言われている。

では、電子タバコは今までのタバコと比べて体の害は少ないのであろうか?答えは『イエス』であると多くの研究が発表している。つまり、従来のタバコに比べると電子タバコは体にそれほど有害ではないらしい。ただし、長期的な害についてはまだ研究がそれほど行われていない。

タバコはあくまでも嗜好品であるべきで、身体を壊すほど吸うべきでないと思う。ただ中毒性が非常に強いため、できたら『さわらぬ神にたたりなし』の精神でタバコと付き合った方が安全であると思う。