前回は三種類の薬について書きましたが、今回は少し趣向を変えて、Q&A形式でお届けしたいと思います。先日YouTubeで薬に関する情報を検索していたところ、『林修の今でしょ!講座 2016年1月31日 間違いだらけの薬の飲み方、新常識を学ぶ』という番組を見つけました。クイズ形式で薬に関する情報を提供していたので、これは分かりやすいと思い、その番組の情報をもとに、薬の正しい飲み方について書いてみることにしました。情報が重複する部分もありますが、アメリカに住む日本人にとっても役立つ視点を交えながら説明していきます。では、早速Q&Aを始めましょう。

Q1. 症状が同じなら、家族が同じ薬を飲んでも大丈夫?

A1. いいえ。

風邪は感染しやすいため、家族や友人、同僚などが同じような症状を持つことはよくあります。そのため、手間を省くために薬を共有することも考えがちです。しかし、薬の適量は体重やアレルギー、健康状態によって異なります。特に子供と大人では体重に違いがあり、子供に大人用の薬を服用させると、副作用が出やすくなります。

また、薬の多くは腸で吸収され、肝臓で解毒され、腎臓で排出されます。子供の体重が大人と同じであっても、臓器の発達具合は異なり、代謝能力が未熟なため、大人と同じ薬を服用することは危険です。

私自身も、苦い経験があります。中学三年生の卒業旅行中に風邪をひき、担任の先生が薬をくれました。飲んだ直後は少し良くなった気がしましたが、帰宅後に症状が悪化し、最終的に1ヶ月の入院を余儀なくされました。後に、市販の風邪薬の中には腎臓に負担をかけるものがあることを知りました。結果として、1年間通院することになり、大変な思いをしました。

このような経験からも、他人に処方された薬を安易に服用するのは危険です。

Q2. 水がない時は、水なしで薬を飲んでも大丈夫?

A2. いいえ。

水なしで薬を飲むと、食道の壁に引っかかり、傷をつけることがあります。最悪の場合、食道潰瘍を引き起こすこともあるため、薬は必ず水または白湯で服用するようにしましょう。

Q3. 水がない時にはジュースで薬を飲んでも大丈夫?

A3. いいえ。

薬の中には、特定の食品や飲み物と相性が悪いものがあります。例えば、

  • グレープフルーツジュース は、肝臓での薬の代謝を抑え、薬が体内に長く残ることで副作用を強める可能性があります。
  • オレンジジュース は胃薬の効果を打ち消すことがあります。
  • カルシウム(牛乳など) は抗生物質の吸収を妨げることがあります。
  • 納豆 は血栓を防ぐ薬(ワルファリン)の効果を増強し、副作用を引き起こす可能性があります。

このように、薬と食品・飲料の組み合わせには注意が必要です。

Q4. 抗生物質は症状が良くなれば最後まで飲まなくてもいい?

A4. いいえ。

抗生物質はバクテリアを抑えるだけでなく、殺菌する作用があります。途中で服用をやめると、残ったバクテリアが抗生物質に対する耐性を持ち、治療が難しくなることがあります。医師の指示通りに最後まで服用しましょう。

Q5. 「就寝前」と指示された薬を他の時間に飲んでもいい?

A5. いいえ。

薬の服用時間には理由があります。

  • 就寝前に服用する薬 は、眠気を誘うものが多いため、運転前に服用すると危険です。
  • 痛み止め(NSAID:イブプロフェン、ナプロキセンなど) は胃を荒らす可能性があるため、食後に服用するのが望ましいです。

不必要な薬について

医療は日々進歩しており、以前の治療法が誤りだったと判明することもあります。例えば、

  • 風邪に抗生物質は不要:ほとんどの風邪はウイルス性であり、抗生物質は無効です。
  • 結膜炎に抗生物質は不要:ウイルス性のものが多く、自然治癒することがほとんどです。
  • 高齢者とスタチン:75歳以上の人がコレステロールを下げる薬(スタチン)を服用すると、衰弱や転倒のリスクが高まるため、慎重に判断すべきです。
  • 睡眠薬のリスク:高齢者の転倒や骨折の原因になることが多いため、できるだけ避けるのが望ましいです。
  • PPI(プロトンポンプ阻害薬):胸焼けに処方されることが多いですが、効果が限定的であることが分かっています。

まとめ

どんな薬にも副作用があります。分量や用法を間違えると、逆に健康を害することがあります。例えば、アメリカでは「水をたくさん飲め」と言われますが、水の過剰摂取が原因で死亡した例もあります。薬に関しても同様に、適量を守ることが大切です。

また、アメリカでは日本よりも体格の大きい人が多いため、薬の標準用量が日本と異なることがあります。患者自身も文化の違いを考慮し、医師と相談の上で服用することをお勧めします。