アメリカの病院に行ったことがある方ならご存じだと思いますが、アメリカの医師はさまざまな健康診断テストを勧めることが多いです。これは、いわゆる「オバマケア」として知られる健康保険制度が施行されて以来、病気の早期発見や予防に対する意識が一層高まったためです。
特に、USPSTF(US Preventive Services Task Force) という機関が重要な役割を果たしています。この機関は、アメリカにおける健康予防推進を担当し、多くの医師がその推奨する予防接種や健康診断テストを参考にしています。今回は、このUSPSTFが推奨する健康診断テストを紹介したいと思います。
USPSTFの評価基準
USPSTFは、健康診断テストの推奨度を次の5段階に分類しています。
- A: 絶対に健康に有益である。
- B: 確かに健康に有益である。
- C: 医師と患者の判断に委ねられる。
- D: 推奨されない。
- I: 証拠が不十分で評価できない。
AおよびB評価のテストは、多くの健康保険で患者の自己負担がないようになっています。そのため、医師はこれらのテストを積極的に勧める傾向にあります。では、具体的にどのような健康診断テストが推奨されているのでしょうか。
1. 脂肪値(コレステロール)の検査
- 35歳以上の男性: A評価(定期的なチェックが推奨される)
- 20〜35歳の男性: B評価(心臓病リスクが高い場合のみ推奨)
- 45歳以上の女性: A評価(定期的なチェックが推奨される)
- 20〜45歳の女性: B評価(心臓病リスクが高い場合のみ推奨)
心臓病リスクの高い人(高血圧、糖尿病、喫煙者、肥満、家族歴がある人)は、若くても定期的な検査が推奨されます。
2. スタチン(コレステロール低下薬)の使用
- 40〜75歳の心臓病リスクが高い人: B評価(低〜中程度のスタチン使用が推奨される)
- 75歳以上: I評価(十分な証拠がない)
スタチンは肝臓に負担をかけるため、医師と慎重に相談する必要があります。
3. 禁煙指導
- 医師が喫煙状況を確認する: A評価
- 喫煙者に禁煙カウンセリングを行う: B評価
妊婦に対して特に禁煙が強く推奨されます。禁煙カウンセリングの方法も、患者の意識や意欲に応じて調整することが重要とされています。
4. がん検査
アメリカにおけるがん死亡率の高い順は次の通りです。
- 肺がん
- 大腸がん
- 乳がん
- すい臓がん
- 前立腺がん
5. 肺がんの検査
- 年間30パック以上の喫煙歴があり、過去15年以内に喫煙歴がある55〜79歳の人: B評価(CTスキャンが推奨される)
ただし、CTスキャンは放射線被曝のリスクがあるため、喫煙者はまず禁煙することが最も効果的な予防策です。
6. 大腸がんの検査
- 50〜75歳: A評価(10年に1度の大腸内視鏡検査が推奨される)
- 76〜85歳: C評価(必要に応じて医師と相談)
- 85歳以上: D評価(推奨されない)
大腸内視鏡検査は、ポリープが見つかった場合、その場で除去できるため、検査と治療を兼ねた有益な方法とされています。
7. 乳がんの検査
- 45〜55歳: A評価(毎年のマンモグラム推奨)
- 55歳以上: B評価(2年ごとにマンモグラム推奨)
- 自己検査(セルフチェック): D評価(効果が証明されていない)
自己検査のみで安心せず、定期的な医療機関での検査が重要とされています。
まとめ
アメリカでは、多くの健康診断テストが推奨されており、特にA・B評価のものは健康保険でカバーされるため、患者の自己負担がないことが多いです。ただし、医師の推奨に盲目的に従うのではなく、リスクや副作用を考慮し、必要性を十分に理解した上で受診することが大切です。
今回は特に重要な健康診断テストについて説明しましたが、まだ他にも多くの推奨検査があります。次回は、これらの詳細についてさらに掘り下げていきたいと思います。
続く

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