名前寺島 美優
所属岡山大学医学部医学科6年
訪問期間2/24 – 3/13/2026
ヒューストンを訪問した理由・動機私がヒューストンを訪問した理由は、最先端の腫瘍医療を学ぶことに加え自身の将来的なキャリアの在り方を具体的に考える機会としたいと考えたためです。これまで腫瘍領域に関心を持ち、研究や臨床実習を通してがん医療に携わってきましたが、実際に米国の医療現場で医師がどのように診療し、意思決定を行い、チーム医療を実践しているのかを直接見る機会は限られていました。特に、MD Anderson Cancer Centerでみられる高難度症例に対する治療戦略の立案や、術中判断を含むダイナミックな臨床現場を体感することは私自身の将来像を描く上で重要であると考えました。また、米国における医療制度やチーム体制、術後管理、働き方を実際に目にすることで、自分が将来的にどのような環境で医師として成長したいのかを考える機会にしたいという思いがありました。
滞在中に学んだこと 今回の見学では、特に腫瘍外科領域において多くの学びを得ることができました。腫瘍外科では患者中心の医療が強く意識されており、単に腫瘍を切除することだけでなく患者さんがどのように生活したいのか、治療後にどのような人生を送りたいのかといった価値観を踏まえたうえで治療方針が決定されていることが印象的でした。例えば、borderline resectable症例に対して術前治療をどのように位置づけるのか、また実際に開腹した際の術中所見を踏まえてどのように判断し対応していくのかといった意思決定のプロセスを間近で学ぶことができました。実際の手術では、患者さんを開腹して初めて明らかになる解剖学的問題に直面することも多く、その場で状況を評価し最適な対応を行う外科医の判断力の重要性を強く実感しました。
特に印象に残ったのは、化学放射線療法後のWhipple手術でした。放射線治療の影響により組織の線維化や癒着が非常に強い状況でも、生駒先生が精緻な手技によって手術を進められている様子を見学することができました。ロボット手術では各操作が非常に精密に行われており、手術の一つ一つの手技に高い技術力が求められることを実感しました。また、開腹手術と比較して患者さんにとって侵襲が少なく、術後回復やQOLの観点からも大きな利点があることを改めて理解しました。また、日米の医療制度の違いについても多くの気づきがありました。例えば、日本と比較して平均在院日数がかなり短いことや術後管理の方法など、医療システムの違いが診療の進め方に大きく影響していることを実感しました。
また、腫瘍内科や感染症内科の見学を通して、腫瘍医療におけるチーム医療の重要性を強く感じました。腫瘍内科外来では、多くの患者さんがヒューストン在住ではなく遠方から専門的な医療を求めて来院されていることが印象的でした。各地から患者が集まることは、MD Andersonが世界的ながん専門病院として担っている役割の大きさを示していると感じました。また、感染症内科では松尾先生のご紹介によりSolid Tumor Teamのもとで見学する機会をいただき、抗がん剤治療や外科的治療を契機に感染症を発症した患者さん、あるいは腫瘍局所の病変に関連した感染症の診療について学ぶことができました。MD Andersonでは感染症内科も腫瘍領域ごとにチームが分かれており、腫瘍医療に特化した専門的な感染症管理が行われていることが印象的でした。
さらに、Houston Methodist Hospitalで勤務されている兒子先生のもとで1日見学させていただきました。MD Andersonとは異なる医療システムのもとでの診療体制や病院運営について学ぶことができ、施設や医療制度の違いによって診療の進め方や患者層が大きく異なることを実感しました。
今回の見学を通して、単に医療技術を学ぶだけでなく、自分は将来どのような医師として、どのような環境で患者と向き合いたいのかについて深く考える機会を得ることができました。がん患者さんとは長期的に関わることが多く、診察のたびの握手やさりげない声かけといった小さな配慮の積み重ねが、良い医師患者関係を築くうえで重要であることも強く感じました。米国の医療現場での経験は、自分の視野を大きく広げるとともに、今後どのような医師を目指していきたいのかを考えるうえで非常に貴重な経験となりました。今回得た学びを今後の研修や臨床の中で生かしながら、腫瘍医療に貢献できる医師へと成長していきたいと考えています。
ヒューストン生活週末も含め、ヒューストンでの生活は大変充実していました。ヒューストンは宇宙開発の拠点として知られており、八木先生ご夫妻にスペースセンターの見学に連れて行っていただきました。ロケットや宇宙開発の歴史についても詳しくご解説いただき、ヒューストンならではの貴重な体験をさせていただき、大変ありがたく感じております。さらに週末には、麻酔科の出海先生がMemorial Hermann Hospitalの見学の機会を設けてくださいました。
また、ヒューストンには多くの日本人の先生方が滞在されており、気軽に食事に誘っていただく機会にも恵まれました。留学やアメリカでのキャリアについて貴重なお話を伺うことができ、今後の進路を考えるうえで大きな励みとなりました。Tex-Mexをはじめとするメキシコ料理やバーベキューなど、現地ならではの食文化も楽しむことができました。生駒先生、福田先生、兒子先生、奥居先生ご夫妻、原田先生、木下先生ご夫妻、小西先生、落合先生、出海先生ご夫妻とご一緒させていただき、大変有意義な時間を過ごすことができました。心より感謝申し上げます。
滞在先の近くにはRice Villageがあり、休日にはランニングを兼ねて訪れ、買い物やカフェでの時間を楽しむことができました。生活環境としても非常に過ごしやすい街であると感じました。また、ヒューストン美術館が木曜日に無料で開放されていることから訪問し、医療以外の文化的な側面にも触れることができました。こうした経験を通して、ヒューストンという都市の多様な魅力を実感することができました。
宿泊先今回の滞在では、SouthgateエリアのAirbnb (2003 Sheridan Street) に宿泊しておりました。MD Anderson Cancer Centerまで徒歩約20分の距離で、毎朝通うのに程よい運動になりました。滞在はルームシェア形式で、必要な生活設備は整っており、見学期間中は問題なく生活することができました。
コメントヒューストンでご活躍されている日本人の先生方や、見学期間中にお世話になった臨床の先生方のおかげで、大変充実した見学となりました。貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました。今回の経験を通して、ぜひまたヒューストンを訪れたいと強く感じました。