新型コロナウイルス変異株「XBB.1.5」に対応するワクチン接種が開始しました!

アメリカ疾病対策センター(以下、CDC)は、9月12日に新型コロナウイルス「XBB.1.5」に対応するワクチンに関して、生後6ヶ月以上を対象とした接種を推奨すると発表し、CVSやWalgreensなどの薬局を始め各地で接種が始まりました。

以下、Q&A方式でワクチンや最近の新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の動向について解説していきます。


質問:今回、接種を開始されたワクチンは何と呼ばれていますか?今までCOVID-19のワクチンを色々接種してきたので、混乱してしまいます

解答:2023-2024 updated COVID-19 vaccine、またはupdated COVID-19 vaccineと呼ばれています。ちなみに、過去に接種されてきたワクチンは、大まかに以下の通り。

  • Original vaccine: 2020年末に開始された初期のワクチンで、たくさんの変異株が出現する前のオリジナル株(従来株、起源株ともいわれる)に対応していた。
  • 2022-2023 bivalent vaccine: 2022年から今月まで接種されてきたワクチンで、もともとのCOVID-19 とオミクロン株「BA.4」「BA.5」の両方に対応していた。

Updated COVID-19 vaccineの接種開始に伴い、2022-2023 bivalent vaccineもoriginal vaccineも接種されることはなくなりました。


質問:どの会社で製造されているワクチンが推奨されていますか?

解答:アメリカでは、Pfizer-BioNTech(以下、ファイザー)社、Moderna(以下、モデルナ)社、Novavax(以下、ノババックス)社で製造されているワクチンが推奨されています。今までのワクチンには、Johnson&Johnson/Janssenが製造していたワクチンも含まれていましたが、今回は含まれていません。接種回数や間隔などは次の質問をご覧下さい。


質問:Updated COVID-19 vaccineは誰が接種するよう勧められていますか?

解答:アレルギーなど接種できない事情がない限り、生後6ヶ月以上の人全員に勧められています。以下、細かく解説していきます。

  • 5歳以上の子供と大人:直近に接種したCOVID-19ワクチンから2ヶ月以上あけて1回接種
    • 今までにCOVID-19のワクチンを接種したか否かに関わらず、免疫状態に問題がない方は1回でよい。
    • ファイザー社、モデルナ社のワクチンのどちらを選んでもよい。
    • 免疫不全のある方は2回以上必要なことがあるので、医療関係者に相談して下さい。
  • 生後6ヶ月から4歳までの子供
    • 今までにCOVID-19ワクチンを一度でも接種したことがある
      • ファイザー社のワクチンを以前に1回接種した:ファイザー社のUpdated COVID-19 vaccineを2回接種するよう推奨(直近のワクチンから3-8週間はあけて1回目を接種、その後8週間以上あけて2回目接種)
      • ファイザー社のワクチンを以前に2回以上接種した:ファイザー社のUpdated COVID-19 vaccineを1回接種するよう推奨(直近のワクチンから8週間以上あけて接種)
      • モデルナ社のワクチンを以前に1回接種した:直近のワクチンから4-8週間あけて1回接種
      • モデルナ社のワクチンを以前に2回以上接種した:直近のワクチンから8週間以上あけて1回接種
    • 今まで一度もCOVID-19ワクチンを接種したことがない:ファイザー社のワクチンならば3回接種(2回目は1回目の3-8週間後、3回目は2回目から8週間以上あける)、モデルナ社のワクチンならば2回接種(2回目は1回目の4-8週間後)

質問:ノババックス社のワクチンはファイザー社のワクチンやモデルナ社のワクチンと何が違うのですか?

解説:ファイザー社のワクチンやモデルナ社のワクチンはmRNAワクチン、ノババックス社のワクチンは不活化ワクチンと、ワクチンの種類が違います。mRNAワクチンはウイルスのタンパク質をつくるもとになる遺伝情報の一部を使用するのに対し、不活化ワクチンでは、新型コロナウイルスの表面にあるスパイクタンパク質によく似たタンパク質をナノ粒子化してワクチンの成分になっています。CDCは、ファイザー社かモデルナ社のワクチンを接種できない、もしくは接種しないことを選択した12歳以上の子供と大人に、ノババックス社のワクチンを勧めています。基本的には2回接種(2回目は1回目の3-8週間後)で、状況により3回目(ブースター)を勧められることがあります。


質問:最近、COVID-19にかかったのですが、ワクチンを接種する必要はありますか?

解答:COVID-19にかかった直後にまた感染する可能性は低いですが、後々、再感染することはあるので、感染して3ヶ月経過してから接種することを勧められています。


質問:Updated COVID-19 vaccineの副作用は、今までのワクチンと違うのですか?

解答:接種部位の痛みや腫れ、疲れ、発熱、頭痛など今までのワクチンと同様と考えられています。今のところ、新しい副作用、今までのワクチンに比べて副作用が起きやすいなどの報告はありません。


質問:日本で行われている追加接種と何が違うのですか?

解答:日本でもファイザー社、モデルナ社のXBB.1.5対応のワクチンが接種できますが、武田社(ノババックス)のワクチンは従来ワクチンです。また、Original vaccinesを完了している方が接種できます。詳細は、厚生労働省ホームページをご覧下さい。


質問:今は新たな変異株が増えてきているみたいですが、updated COVID-19 vaccineは新たな変異株にも効果はありますか?

解答:アメリカでは現在、変異株「EG.5」(通称:エリス)が感染の主流になっていますが、エリスはオミクロン株のXBB株からの派生型なので、CDCは、これらの変異株に対しても今回のワクチンは効果があるとみなしています。以下のグラフに示されるように6月はXBB.1.5が主流でしたが、現在はEG.5が主流となっています。

https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#variant-proportions より引用)

また、国により、流行株が異なります。

https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/lb_virus/worldmutation/ より引用)

流行株がデルタ株からオミクロン株へ変わった2021年末に感染状況やワクチンの効果が大きく変わりましたが、オミクロンの亜系統の中での小さな変化は世の中にそれほど大きな影響を及ばさないこともあります。最新の情報を入手し続けていきましょう。


質問:ワクチンは健康保険が効きますか?

解答:ほとんどの場合、健康保険が効き無料となりますが、Out-of-network(保険会社が提携契約していない)の薬局や医療機関で接種したら保険が効かなかったという場合もありうるので、事前に確認しておきましょう。


質問:アメリカで健康保険に入っていないのですが、ワクチンは有料ですか?

解答:CVSでは自費でワクチン接種をする場合は$190.99かかると明記されていますが(CVS COVID-19 vaccine)、CDCには、無保険の人でも持っている保険がワクチンをカバーしない人にでも無料でワクチン接種できるよう、CDC’s Bridge Access Programがあり、医療機関、保健所、薬局(CVSも含む)で接種できます。無料にするために書類手続きが必要なこともあるので、遠慮せず聞いてみましょう。


質問:最近、COVID-19が増えていると聞きますが、これからどうなるのでしょうか?

解答:感染者数がピークアウトしたのではないかと考えられている地域もありますが、入院患者数、死亡者数はまだ増加傾向にあります。やや感染者が多い状態はまだ続くかもしれませんが、以前のような大流行にはならないだろうと予測されています。引き続き、最新の情報を入手し続けていきましょう。

(https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#datatracker-homeより2023年9月24日に引用)

CDCからの情報を元に解説させて頂きました。個人の健康の関する質問はご遠慮頂いておりますが、この記事に関する質問、さらに取り上げて欲しいトピック等ございましたら、お気軽に、JMTXホームページのお問い合わせ欄からご連絡ください。

2023年9月24日 福田 由梨子