定期健診の勧め

かかりつけ医を作り、アメリカで健康診断を1年に一度受けましょう!

福田由梨子(所属:ベイラー医科大学感染症科)

日本でもアメリカでも健康診断はありますが、仕事や普段の生活の忙しさを理由に、ついつい先延ばしにしていませんか?アメリカの医療システムは分かりにくいですが、頑張って最初の一歩を踏み出せば、毎年健康診断を受けに行くのは難しいことではありません。採血も含めて1時間前後で終わります。以下、Q&A方式で、アメリカでの健康診断について説明していきます。 

Q:なぜ健康診断を受けた方がいいのでしょうか? 

A:白血病や脳腫瘍のように、健康に気をつけているかいないかに関わらずかかってしまうことがある病気がある一方、心筋梗塞のように、生活習慣を改善したり慢性の病気をきちんと治療することで病気になるリスクを大幅に下げられる病気もたくさんあります。また、医療機関を受診した際、本人が自覚していなくても、問診や診察を通して、重大な病気を早期発見することはたくさんあります。防げる病気を予防したり重大な病気を早期発見・治療することで健康でいられる時間は長くなります。若い頃は問題なくても、30代、40代、50代と少しずつ問題が見つかってきます。一年に一度、少しだけ時間を割いて、健康を維持していきましょう。 

Q:日本のがん検診、健康診断、人間ドックとアメリカの定期健診は制度上、どのように違いますか? 

A:日本 

がん検診:国の推奨をもとに市町村が実施している5つのがんの有無を調べる検査。自己負担はなしか少額です。 

健康診断:生活習慣病の予防を目的として行う診察・検査で、雇用主が労働者に対して年に一回以上実施する健康診断や自治体が行っている特定健康診査などがあります。自己負担はなしか少額です。 

人間ドック:個人の意思で受ける精密検査であり、生活習慣病の予防にとどまらずがん検診や脳検査など多岐にわたります。自費で受ける場合と所属している健康組合が費用を補助している場合があります。 

アメリカ 

患者がかかりつけ医を一年に一度健康診断として受診した際、かかりつけ医がガイドラインに基づきオーダーし、費用は保険会社と患者で負担します(原則として健康診断に関わる費用は保険会社が負担することになっています)。 

Q:日本のがん検診、健康診断、人間ドックとアメリカの定期健診の検査項目の主な違いは何ですか? 

A:日本のがん検診と健康診断の項目と、アメリカの健康診断の項目での大きな違いは、日本のがん検診に胃がん検診が含まれていることです。日本の人間ドックは基本的に自費で行う任意検査なのでシンプルなものからデラックスタイプまでかなり幅広いです。可能であれば、アメリカでの健康診断に加え、日本に出張の際に人間ドックで胃がん検診を受けたり、ヒューストンの西川哲医師が日系企業の人間ドックを取り扱っているので、西川医師に相談するのもよいでしょう。 

Q:アメリカのかかりつけ医 (Primary Care Physician (PCP))とは何ですか 

A:一つの病気だけを診るのではなく、患者の全体像を把握し、その患者の医療管理の中心となる医師のことを言います。何か健康上の問題が起きた時にまず対応し、必要があれば専門医を紹介するのが大きな役目です。かかりつけ医の役割として、年に一度の定期健診を行うこと、軽度の高血圧、高脂血症、糖尿病、不眠などの慢性疾患の管理、熱が下がらない、耳が痛いなど急な問題が起こった時の対応があげられます。特に問題がなくても一年に一度定期健診に行き、関係を築いておいた方が、急な問題が起こった時にすぐ相談できる医師がいて心強いです。 

Q:アメリカの定期健診(annual check up)ではどんなことをするのですか? 

A: 主に以下のことを20-30分の診察時間内に行います: 

  • 問診(今までにかかった病気、今、困っていること、生活習慣など) 
  • うつ病や不安障害などのメンタルヘルスのスクリーニング 
  • 血圧を含むバイタルサイン測定と診察を行います。 
  • 女性は子宮頸がん検診(医師によって後日行う場合、または産婦人科医に全て委託している場合があります) 
  • カウンセリングやこれからする検査の説明 

診察後、必要に応じて以下のことを主に行います。 

  • 高脂血症や糖尿病などのスクリーニングのための採血(クリニック内や近くでできることがほとんどです。8時間空腹であるのを求められることがほとんどなので朝早めに予約するのがお勧めです。) 
  • 予防接種(インフルエンザや破傷風などクリニック内でできる予防接種とCOVID-19や帯状疱疹など薬局にいかなければできない予防接種があります。) 
  • 大腸がん検診には主に便潜血検査と大腸内視聴検査があり、便潜血検査は後日どのように採取するのか検査室から指示があり、大腸内視鏡検査は消化器科医に紹介されます。 
  • 女性の乳がん検診は放射線科に予約をとり後日行われることがほとんどです。 
  • その他に必要な検査や専門医紹介も後日予約をとって行うことがほとんどです。 

採血時間を入れても1時間前後で終わるので、それほど時間はとれません。急いでいる場合、採血を後日することも可能です。 

予約から診察までの流れはこちらを参照して下さい:診察までの流れ 

Q:どのような医者がかかりつけ医になれるのですか? 

A: 家庭医療科(Family Practice)、内科(Internal Medicine)、小児科(Pediatrics)、そして産婦人科(OBGYN (obstetrics/ gynecology))の医師がかかりつけ医になれます。家庭医療科は大人と子供の両方を診れ、産科(正常分娩)もできます(産科も研修しますが、指導医として働く時、全員が産科をし続ける訳ではありません)。内科は大人だけ診れ、子宮頸がん検診(pap smear)や単純な婦人科疾患を診る内科医もいます。産婦人科医は基本的には婦人科疾患や婦人科健診を担当します。かかりつけ医のパターンとしては以下のようになります。 

  • 成人男性のかかりつけ医:家庭医療科医(家庭医)のみ、または内科医のみ 
  • 成人女性のかかりつけ医:家庭医療科医のみ、内科医のみ、家庭医療科医+産婦人科医、内科医+産婦人科医(家庭医療科、内科に予約する際や診察を受ける際に、子宮頸がん検診もそこでできるのか、産婦人科医に行く必要があるか聞いた方がいいです。) 
  • 小児のかかりつけ医:家庭医療科医、または小児科医 

Q:かかりつけ医を選ぶポイントはなんですか? 

A: 

  1. 医師の質、人柄 

バラつきがあるので、口コミやネットの評判を調べてみると安心できるかもしれません。レビューがよくても、実際に診察を受けてみて満足できなかったり信頼できなければ変更することはできます。ただ、annual check upは一般的に年に一度だけ保険でカバーされるので、医学的に問題がなければ、かかりつけ医の変更は翌年にするのが無難です。 

  1. 連絡の取りやすさ、オフィスの対応 

医師の質だけでなく、受付やメディカルアシスタントの質も、患者の満足度に直結します。予約を取る時や服用している薬で副作用が起きて医師に連絡を取りたい時などクリニックに電話することがありますが、なかなか電話がつながらないクリニック、医師に確認したら電話をくれると言ったのに一向に連絡をくれないクリニックなども現実にはあるので、考慮した方がいいでしょう。また、電話の代わりにポータルを介してコミュニケーションがとれるクリニックは日本人にとってとても便利です。 

  1. 信頼度の高い病院と連携していたり多くの専門医とコンタクトがあるか? 

複雑な病気があったり入院することがある方には重要なポイントとなります。日本の開業医のように個人が経営しているクリニックと医療団体が経営しているクリニックがあります。個人が経営しているクリニックはアットホームな雰囲気で通いやすいところもたくさんありますが、医療団体が経営しているクリニックの方が電子カルテも含め他の病院と連携していることが多く、複数の病気がある場合は便利なことがあります。 

  1. 日本語が通じるか、または通訳サービスがあるか 

日常英会話に困っていなくても、医療英語は専門用語が交わり分かりにくいことがあるので、必要な時に通訳を頼めると便利です。 

  1. 自分の医療保険のインネットワークか? 

インネットワークでないと診察代、検査代は高額になり得ますので、診察前にインネットワークかどうか必ず調べておきましょう。 

Q:ヒューストンではどのかかりつけ医がお勧めですか? 

A:ヒューストンには多数のかかりつけ医が働いていて迷ってしまいますね。ヒューストン在住の日本人がお勧めしているかかりつけ医またはかかりつけ医が働いているクリニックを以下に記します。女性の定期健診に関してですが、以下のクリニックで子宮頸がん検診が行われていない場合は産婦人科を受診する必要があるので、当ホームページのお勧めクリニックリストをご参照ください。 

ダウンタウン 

Kelsey-Seybold Clinic, Downtown Clinic 

概要:Kelsey-Seybold Clinicは、UnitedHealthの子会社であるOptumが運営し、ヒューストンを中心に多数のクリニックを経営する医療団体です。かかりつけ医だけでなく専門医も働いているので、紹介や検査が必要になった場合、Kelsey-Seybold Clinicの中で行われることが多いです。入院が必要な場合、Houston Methodist HospitalやBaylor St. Luke’s Medical Centerと契約を結んでいます。オンラインで予約ができたり、ポータルがしっかりしているなど大きな組織ならではの良さがあります。 

URL: Downtown Clinic | Kelsey-Seybold Clinic  

住所:1200 McKinney St., Suite 473 Houston, TX 77010 

日本語での診療:オンライン通訳あり 

日本人からのコメント:Dr. Sehgal Pujaがお勧め。健康診断の資料はアップデートれています。システムもしっかりしています。ダウンタウンにクリニックがあるので便利です。 

メモリアル 

Center for Allergy and Asthma 

概要:アメリカで内科、アレルギー科の専門医である小川リール好子医師が開業しているクリニックで、アレルギーの病気だけでなく、生活習慣病やかぜ様症状など一般内科の病気も取り扱っていて、かかりつけ医もされています。 

住所:12727 Kimberley Lane Suite 210, Houston, TX 77024 

日本語での診療:あり 

日本人からのコメント:大変親切で、親身に相談にのって下さり、細かい説明を毎回してくださいました。 

Village Medical 

概要:プライマリケアに重きをおき、10州以上にわたり多数のクリニックを持つ医療団体で、Walgreensの中にもクリニックをおいています。 

URL: Village Medical 

住所:9055 Katy Freeway, Suite304 Houston, TX 77024 

日本語での診療:不明 

日本人からのコメント:グループでやっているので、急病で担当医が居なくても他の先生が対応していただけるのは便利かと思います。血液検査やレントゲンの設備もあるし、Urgent Care、リハビリなどもあり便利です。以前に日本人の患者さんが多くいた先生は、高齢で退職されたみたいです。 

Kelsey-Seybold Clinic, Memorial City Clinic 

概要:上記(Kelsey-Seybold Clinic, Downtown Clinic)参照 

URL: Memorial City Clinic | Multispecialty Kelsey-Seybold Clinic 

住所:929 Gessner Road, Suite 1600 Houston, TX 77024 

日本語での診療:オンライン通訳あり 

日本人からのコメント:特に決まったPCPではなくその時の会える先生に会っています。受付の人も親切なので、気に入っています。保険によっては、KelseyのPCPを選ぶと, 専門医もKelseyを使わなくてはいけないので、不便を感じる人もいるかもしれません。 

Kelsey-Seybold Clinic, Memorial Villages Campus 

概要:上記(Kelsey-Seybold Clinic, Downtown Clinic)参照 

URL: Memorial Villages Campus | Kelsey-Seybold Clinic 

住所:1001 Campbell Road Houston, TX 77055 

日本語での診療:オンライン通訳あり 

日本人からのコメント:同上 

タングルウッド(ギャラリアモールの近く) 

Kelsey-Seybold Clinic, Tanglewood Clinic 

概要:上記(Kelsey-Seybold Clinic, Downtown Clinic)参照 

URL: Tanglewood Clinic | Multispecialty Kelsey-Seybold Clinic 

住所:1111 Augusta Drive, Houston 77057 

日本語での診療:オンライン通訳あり 

ケイティ 

Kelsey-Seybold Clinic, West Grand Parkway Clinic 

概要:上記(Kelsey-Seybold Clinic, Downtown Clinic)参照 

URL: West Grand Parkway | Multispecialty Kelsey-Seybold Clinic 

住所:2510 W. Grand Parkway N. Kary, TX 77449 

日本語での診療:オンライン通訳あり 

オンライン 

倉岡クリニック 

概要:アメリカでの内科専門医の資格をもつ日本人医師が経営していて、ダラス、アトランタ、コロンバスにクリニックがあります。オンライン診療も行っています(薬の処方、検査のオーダーもできます)。 

URL: Kuraoka Clinic – バイリンガルの最先端医療サービス 

住所:3012 E. Hebron Pkwy. • Suite 104, Carrollton, TX 75010 

日本語での診療:あり 

 さらに詳しくお知りになりたい場合は、日本テキサス医学振興会のホームページをご覧ください。お問い合わせはホームページのお問い合わせ欄からお願い致します。