6. 予約から診察までの流れと留意点

この章では、急病ではなく、annual check upや慢性疾患の定期受診など事前に予約して受診する場合の流れを説明していきます。日本と違って、かなりややこしいですが、一度受診すれば二回目からは楽になるので、頑張って最初の一歩を踏み出しましょう!

1. 受診するべき医療機関の種類、専門科を決める

受診理由と目的を自分の中で明確にし、どんな医療機関、何科を受診するべきなのかを決める。

2. 具体的にどこに行きたいかを決める

口コミやインターネットの情報、レビューなどを参考に候補を決める。自分の医療保険のホームページに載せられているクリニックのリストから選んでもよい。

3. 保険適応を調べる

自分の医療保険がそのクリニック、医師がin networkであるか、自己負担額がどれくらいになるかをホームページや電話で確認する。日本の海外赴任者用保険や長期渡航者向けの保険などを利用する場合は、自分でまずは医療費を立て替える必要があるのか、請求書を保険会社に直接送ってもらえるのかなどをきちんと確認しておきましょう。

4. クリニックのホームページから、またはクリニックに電話をして予約をする。

日本語通訳サービスを提供しているクリニックでは受付とのやり取りにも通訳をお願いできるので、必要では遠慮なくお願いしましょう (Can I ask for a Japanese interpreter, please? など)。最近ではホームページから予約をとれるところが増えています。予約時に必要な主な情報は以下の通りです(受診した時に聞かれる場合もあります):

  • 氏名、生年月日、住所、電話番号、Eメールアドレス、social security numberなどの個人情報
  • 医療保険:保険会社名、カードに載っているSubscriber, Member ID, Group No, Planなど。誰の名前で保険に入っているのか (subscriber)、自分 (self)ではない場合は、spouse, familyなど保険に入っている人との関係を聞かれます。カードの裏表をアップロードするよう指示してくるサイトもあります。
  • 受診理由:以下の例のように簡潔で十分です。
    • かかりつけ医をもちたい (I would like to establish primary care, I would like to have a primary care physician (PCP))
    • 年一回の健康診断を予約したい (I would like to schedule an annual checkup appointment)
    • 3ヶ月ごとの継続外来を予約したい (I would like to schedule a 3-month follow-up appointment)

専門外来を予約する場合、保険やクリニックのルールによって、かかりつけ医からの紹介(referral)が必要な場合、かかりつけ医や他の医師からの紹介が必要な場合、紹介なしに自分で電話して予約をとれる場合 (self referral)などがあります。紹介が必要と言われたら、紹介医のクリニックに紹介処方箋 (referral order, 日本と違い、診療情報提供書はほとんどの場合必要ありません)をファックスしてもらいましょう。場合によっては、紹介処方箋と共に、今までのカルテ (medical record)のコピーをファックスしてもらう必要がある時もあります。自分で専門外来にかかる必要があると考え、かかりつけ医にかからず直接専門外来クリニックに電話してみたら、紹介なしでは診れないから、まず、かかりつけ医やurgent careを受診して紹介してもらってください、と言われることもあります。保険会社が制限をかけている時もありますし、患者さんが自分の判断で専門外来を受診したら全く見当違いの科だったということもあるので不要な受診を避けるという意味で専門外来のクリニックの方で制限をかけていることもあります。

5. 予診表を記入する

現在の症状、今までにかかった病気、内服薬、家族がかかった病気、アレルギーなどの質問に答えていきます。予約時に電話で聞かれる場合、メールで送ってくれ事前に記入しておくよう言われる場合、ポータルから事前に記入しておく場合、受診当日少し早めに行き記入するよう言われる場合などがあります。

6. 患者ポータルへのアクセス

患者ポータルとは、MyChart や healowなど患者が医師や病院などの医療提供者とコミュニケーションをとれるようにする医療関連のオンラインアプリケーションです。予約の管理、問診の記入、受付や医師へのメール連絡、検査結果や処方された薬一覧の閲覧、料金の支払いなどができます。オンライン診療をこのポータルを経由して行うこともあります。

慣れるまでに時間がかかったり普段からあまりパソコンやスマートフォンのアプリを利用しない人には難しい場合もありますが、外来に電話してもつながらないことが多いことを考えると非常に便利です。スマートフォンやタブレットのアプリとしてダウンロードして利用する場合、パソコンからウェブサイトにログインして利用する場合、両方できる場合があります。  受診前にアクセスしておくようにと案内される場合、受診時に案内される場合、紙媒体中心で患者ポータルを利用していない場合があります。

7. 受診日のリマインダー、予約の変更

予約していた患者さんが当日受診しなかった (no-show)場合、クリニックの収入源減になってしまうので、予約している患者さんに予約日の直前に電話やテキストなどでリマインダーが送られてくることが多いです。他の患者さんに迷惑がかかるだけでなく、予約しているのに断りなしに受診しなかった場合co-pay分を請求されたり、あまりにno-showが続くと受診拒否されてしまうこともあり得るので、予約が不要になった場合は必ず事前にキャンセルしましょう。

8. 受診当日

主な持ち物は以下の通り:保険証のカード、身分証明書。必要に応じて、内服薬リスト、過去の検査結果やカルテのコピー。

<当日の流れ>

①受付 (check in)

予約の時間と名前を告げる。保険証のカードや運転免許証の提示を求められたり、医療費支払いの同意書や治療を受けることの同意書など複数のフォームにラインを求められたりする。日本で使うような病院診察券はこちらではない。Co-payの支払いを求められることもある。通訳が必要な場合は受付でお願いしてよい。

②Medical Assistantまたは看護師による予診

待合室で待っていると呼ばれ、診察室に案内される。身長、体重、バイタルサインなどを測定し、内服薬や今までかかった病気などを聞かれる。医師に聞きたいこと、不安に思っていることなどを伝えると、医師に伝えてくれることもある。

③診察

診察室で待っていると、医師が入ってきて診察が始まる。かかりつけ医や小児科では健康診断のためのアポイントメントを20-30分ごとに設定しているところが多く、日本より患者一人にかける時間が長いので、遠慮せず質問は全て聞きましょう。

④受付 (check out)

診察が終わると大抵は受付に行くよう指示され、処方された薬や次の予約はいつにすべきかなどが書いてあるafter visit summaryをもらう。血液検査や画像をする場合は、どこでするべきか予約が必要かなどを聞く。必要なら次回予約をとる。一度オフィスを離れたあと、質問があり後日電話してもつながりにくいことは多いので、考えられる質問はその場で全てしましょう。

9. 診察時に勧められた検査、薬など

アメリカの医療は細分化されています。

①採血や尿検査

診察室やクリニック内で行われる場合もありますし、処方箋を持って、Quest Diagnostics (https://www.questdiagnostics.com/)などの検査センターに行くよう指示されることもあります。

②予防接種

子供の予防接種やインフルエンザの予防接種は診察室で接種できることが多いですが、帯状疱疹ワクチンなどあまり一般的でない予防接種は薬局で接種するよう指示されることもほとんどです。

③放射線検査

病院内のクリニックであれば、X線は病院の放射線科 (Radiology)で予約なし (walk-in)で当日できることが多いです。超音波検査 (Ultrasound)、CT、MRIなどは病院の放射線科や外部のImaging centerで予約を取って検査を受けることになります。

④薬

院外処方なので、薬局で購入します。

10. 診察代を払う

後日、医療機関と保険会社が医療費を交渉し、最終価格が決まると請求書が送られてくるので、自己負担額を払います(詳細は、4.アメリカの医療保険を参照してください)。

<最終更新日:1/2023 福田由梨子>

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