病院見学の感想・染谷 将太さん

染谷 将太さん (慶應義塾大学循環器内科)

名前染谷 将太
所属慶應義塾大学循環器内科
訪問期間2023年7月4日〜7月29日
ヒューストンを訪問した理由・動機元々海外に長く住んでいた事や、数年コロナ禍で海外に出かける事が出来なかった事から、久しぶりに海外に出て、折角だからアメリカの医療を見学したいと思い、病院からお休みの許可を頂きヒューストンにあるクリニックに見学・実習を4週間行いました。ニューヨーク、カルフォルニアなど様々な行き先の候補はあったものの、これまで一回もテキサスに行った事が無く、米国第4の都市のヒューストンはどんなところだろうと前から思っていた事、(当時)日本からのANAの直行便があった事、またコストの面からもNYやCAの都心部と比較して優れている事から、ヒューストンを最終的に選びました。
滞在中に学んだこと月・水・木曜日はヒューストン中心部から車で15分程度離れた場所のクリニックに行き、火・金曜日は中心部から車で30–40分程度かかるSeabrookのクリニックにて実習を行いました。クリニックは他にも大体1–2人他の国からの実習生がおり、実習が終わった後にご飯を一緒に食べたりして、仲良くする事が出来ました。
クリニックのAttending physicianは元々パキスタン出身の米国内科専門医で、主に現在はプライマリーケアを主な仕事にされている先生で、ヒューストンのクリニックはバスの乗り継ぎで難なく通っていけたのですが、Seabrookは遠いだろうという事で (実際にバスの時刻表を調べても、クリニック開始時刻までに公共交通機関のみで到達する事は無理でした)、他の国からの実習生とも待ち合わせをして、ご親切にも先生の都合の良い場所でピックアップしてもらい、テキサスらしいトラックの様な大きな車でフリーウェイを走ってもう一つのクリニックに週に2回通っていました。いくつもレーンがある大規模なフリーウェイで日本では見かけない大きな車が沢山走っていて、通勤の経路に観光名所としても有名なNASA・スペースセンター・ヒューストンがあり、スペースシャトルを横目に実習地に行くなど、日本や米国の他の都市では味わう事の出来ない通勤体験をさせて頂いた事が大きく印象に残っています。
クリニックでは、内科の患者を先生と一緒に見させて頂くのですが、日本での内科外来は経験があるものの、診る疾患が日本で経験してきたものと違う事も往々にあり、最初は驚きを隠せませんでした。米国の医療システムとして、プライマリ・ケア医 (かかりつけ医) の存在があり、先生はプライマリ・ケア医として、日本の一般内科外来では殆ど定期的に診る事は殆ど無い心移植後や肺移植後の方や、日本では一部の病院やクリニックで診るであろうHIV感染症の方を診てらっしゃったのが印象的でした。これらの患者さんは当然、定期的には移植や感染症の専門外来に通院するのですが、このような患者さんをかかりつけ医としてフォロー出来る事は、日本の医療システムとは大きく違う点と思いました。
また、治療に関して驚かせられる点はやはり治療費です。日本の様に国民皆保険が無く、民間保険で医療費をカバーするシステムで、かつ人件費が高い国では、薬を含め治療費が高く、また使用出来る薬剤や検査、その頻度も保険会社による影響があり、さらに会社や保険内容によっても差が出るなど、治療には様々な複雑な要素が絡んできます。高血圧症、糖尿病などcommon diseaseに関しても、保険の内容から処方される薬剤が日本で良く使われるものと違ったりして (保険やガイドラインの関係からかDPP4阻害剤が処方される事は殆どありませんでした)、現地で経験しないと中々実感出来ない事を学ばせて頂きました。
他にもオンライン処方があったり、様々な人種の方が患者さんとして来院されたり (テキサスはメキシコと近い事から、スペイン語のみで英語が喋られない方も多かったです) と、様々な違いがある事を学び、全体的に有意義な実習の時間を過ごせました。
ヒューストン生活の感想ヒューストンはとても広く、メトロレール (路面電車)、バスなどで移動が出来ますが、場所によってはバスの移動が難しかったり、また治安も良くない地域があったりするので予めどの場所が比較的安全か、移動しやすいのかなどを調べるのが大事だと思います。移動は状況によっては高くてもUberやLyftなどを利用したり、自分は利用しませんでしたが、もし国際免許証などアメリカで運転出来る資格があればレンタカーやTuroなどのカーシェアリングアプリで車を借りてしまうのも良いのではと思います。無論、なるべく夜一人で街中を歩かない、治安が悪い地域に近寄らないなどの工夫は必要だと思います。
夏はとても蒸し暑いです。気温で40℃を超える事も多く、日差しも強く感じるので日本からは日焼け止めを持ってくるのは必須だと思いました。一方で冬はNYやニューイングランドなどの東海岸の都市よりも過ごしやすいようなので、暑さが苦手な方は季節も考慮してテキサスに行くのが良いかなと思いました。
観光では、テキサス・メディカル・センターからそう遠くない所にヒューストン自然科学博物館、ヒューストン美術館などがあり、重要な事ですが冷房がガンガン効いているのでそういった場所で観光を楽しんだり、テキサスバーベキューやテクス・メクス料理のお店で食事を楽しんだり、大きな屋内ショッピングモールのGalleriaで買い物を楽しんだりしました。また、前述のNASA・スペースセンター・ヒューストンはヒューストン中心部から離れていますが、様々な展示がありヒューストンに来たら見逃せないスポットの一つです。野球などのスポーツ観戦もしてみたかったのですが、それは次回以降のお楽しみにとっておきたいと思います。
宿泊先自分はあまり考えず、テキサス・メディカル・センターの近くのホテルに長期滞在割引で宿泊していました。もしかすると、Airbnbや他のサイトで色々探していけば、良い条件の滞在先が見つかったかも知れませんが、価格がそこまで高くなかった事、メトロレールの駅とバス停に近く、食事のクレジットが付帯していて、ランドリーがあった事から、そこに決めました。
食料品はスーパーで買い物をしたり、時間がない時はUberで持ってきてもらったりしましたが、滞在場所に冷蔵庫があるか、電子レンジや台所を使えるかなどは前もって確認するのが重要だと思います。円安や物価高の影響で、食事は外食だと高くなるので、数週間以上の滞在であれば、携帯式の電気ポッドや小さな炊飯器、お米を持ってきたりすれば良かったなと思いました。
コメント兒⼦先⽣、福⽥先⽣、松尾先⽣を始めJMTXの皆様にはとてもお世話になりました。現地でInterventional cardiologistをされている西川先生をご紹介頂き、日本料理をご馳走になったり、また、お忙しい中Houston Methodist Hospitalをご案内して頂いたり、日本に帰国前にとても美味しいテクス・メクス料理をご馳走になったりと、とても楽しい滞在にして頂いた事をこの場をお借りして心より感謝申し上げたいと存じます。
また、慶應でも大変お世話になった上司の藤田先生にもご多忙の中お会いする事が出来て、中華料理をご馳走になり、こうした以前からの繋がりを通じて様々な体験をさせて頂いたのはとても幸運だったと思います。
いつかまたテキサスに仕事や観光で赴きたいと思っておりますが、自分自身も周りに留学に興味のある方がいたら、その方の助けとなるように今後とも頑張ってまいりたいと思います。ありがとうございました。

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