19. アメリカの癌診療について

1. 総論

日本では腫瘍内科と言う言葉は一般の方にはあまりなじみがない言葉かもしれません。

日本とは違い米国のがん診療の多くが、臓器別の専門家ではなく、腫瘍内科によって抗がん剤などが決められます。腫瘍内科専門家の中でも、さらに臓器別に分かれている癌専門病院や、血液腫瘍と固形腫瘍によって大まかに分かれている病院と病院によって診療範囲は様々です。

また、多くの固形癌が手術や気管支鏡などの専門的な手技や治療が必要になるため臓器別専門家と並診になることが多く、さらには疼痛のコントロールや末期癌の場合には早い段階から緩和医療専門医が治療に加わることも多くみられます。

さらにMD Andersonのような癌専門病院では、多くの臨床試験に参加していることが多いいです。必ずしも臨床試験で使われる薬が効果があるとは限りませんが、このような臨床試験に加わることで治療の選択肢が増えることも癌専門病院を受診することのメリットと思われます。

2.各論

2-1) 癌健診と早期発見の大切さ

日本とは違い米国では健康診断が別に特別にあるわけでなく、プライマリーケアの一部として取り入れられています。USPSTF(U.S. Preventive Service Task Force)と言われる機関により、医学研究を元にどの癌に対して本当に健診として意味があるのか、年齢は何歳からスタートした方が良いのか、検査の効果だけでなく医療経済なども考えた上で利益があると思われる癌検診が行われます。

https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation-topics/uspstf-a-and-b-recommendations

そのため、日本との仕組みの違いに驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。また、米国のデータを元に検査・癌の健診内容が決まっているために、胃がんなどの日本やアジア人に多い癌に関しては、注意が必要になるかもしれません。

癌の治療が日進月歩で進歩しているとはいえ、進行癌は一般的に悪い予後が悪く、予防と早期発見が最も大切となります。その一方で過剰な精度の悪い検査をすることは、癌でない疑い病変を検出することになり、更なる余計な検査と患者の不安を引き起こすことになり、プライマリケアの医師と慎重に検査内容を考える必要があると考えられます。

2-2) 癌のリスクを減らすために

癌によっては予防が確立してきているものもあります。例えば、子宮頸がんに関連するHPVウィルスはワクチンが広まっており、オーストラリアなどのデータからも子宮頸がんの発生率が減少したという報告や、肝硬変を引き起こし肝臓癌の原因となるC型肝炎には非常に高い総効率の治療薬がこの5年ほどで一般的となりました。B型肝炎に関しても、ワクチンの効果が高く、日本でもようやく子供の予防接種に取り込まれました。

2-3) 抗がん剤の進歩

皆さんは抗がん剤とお聞きするとどのような印象を受けるでしょうか? 苦しいとか髪の毛が抜けるなどのネガティブな印象が多いかと思います。確かに現在でも、そういった抗がん剤が必要な癌が多くある一方で、分子標的薬と言われるような なるべく癌細胞以外の細胞を攻撃しないで効果を高めて副作用を抑える治療薬など抗がん剤の治療も日進月歩です。また、抗がん剤治療に伴う副作用を抑える治療法などの対応も進歩していると思われます。

3. 日本人に診てもらえる医療機関

MD Anderson Cancer Center

白血病科:佐々木 宏治

外科:生駒 成彦

外科:小西 毅

<最終更新日:1/2022>