Dr. Eriのウェルネスコラム
8.忙しい時こそ、睡眠は削る時間ではなく“自分への投資”
忙しくなると、つい削ってしまうもの。
その一つが「睡眠」ではないでしょうか。
仕事、家事、自分の時間。やりたいことが多いほど、「あと1時間あれば」と思い、その1時間を睡眠から捻出してしまう。
でも、睡眠は本当に「何もしていない時間」なのでしょうか。
今回は、睡眠を「休む時間」ではなく「自分への投資」という視点から考えてみたいと思います。

「あと1時間」を睡眠からもらっていませんか?
夜、やっと一日の予定が終わったあとに、
「せっかくだから、もう少し自分の時間を楽しみたい」
そう思って、スマートフォンを見たり、動画を見たり、仕事の続きをしたり。気づけば予定していた就寝時間を過ぎている。
そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。
確かに、1時間遅く寝れば、その日の自由時間は1時間増えます。
でも、
「睡眠を1時間削る=自由な時間が1時間増える」とは限りません。
睡眠は、集中力や判断力、気分、免疫機能、身体の回復など、翌日の私たちのコンディションに広く関わっています。睡眠不足が続けば、仕事のパフォーマンスやミス・事故のリスクにも影響します。
翌日、頭がぼんやりして仕事にいつもより時間がかかる。
夕方には疲れ切って、やりたかったことができない。
なんとなくイライラして、気持ちにも余裕がない。
そうなれば、前日の夜に手に入れた「1時間」を、翌日に返しているとも考えられます。
だからこそ、睡眠は単なる休息ではなく、
「明日の自分が元気に、機嫌よく、効率よく動くための投資」
なのです。
「睡眠の質」を追いかける前に
最近は「睡眠の質」という言葉をよく耳にします。
自分に合った寝具を選ぶ。睡眠を測定するデバイスを使う。寝室の環境を整える。
もちろん、こうした工夫も大切です。
でも、その前に一度確認してほしいことがあります。
そもそも、十分な睡眠時間を確保できているでしょうか?
CDC(米国疾病予防管理センター)は、18~60歳の成人に1日7時間以上の睡眠を推奨しています。「睡眠の質」の前に、まず「量」を確保することが重要なポイントです。
例えば、7時間を一つの目安とすると、毎日6時間睡眠が5日続けば、単純計算で週に5時間の不足になります。
「もっと質の良い睡眠をとらなければ」と頑張るより、
「今日は30分早く寝られないかな?」
と考えてみませんか。
睡眠への投資は、そんな小さなところから始められます。
昼寝は「サボり」ではなく、午後への投資
睡眠への投資は、夜だけではありません。
午後、どうしても眠くて仕事に集中できない。
そんなとき、「昼寝なんてしている場合じゃない」と眠気を我慢して頑張っていないでしょうか。
実は、短時間の昼寝は、眠気を和らげ、午後のパフォーマンスを取り戻すのに効果的といわれています。研究では、わずか10分程度でも、目覚めの良さや疲労の改善が認められています。
つまり昼寝も、
午後の自分のパフォーマンスを取り戻すための「小さな投資」
と考えることができます。
ただし、昼寝は長く寝ればよいというわけではありません。
おすすめは10~20分程度。
長く眠ってしまうと深い睡眠に入り、起きた直後に頭がぼんやりする「睡眠慣性」が起こりやすくなります。
時間帯は、昼食後から午後の早めまでを基本に。遅い時間の昼寝は、夜の睡眠に影響してしまう可能性があります。
また、ベッドに入って本格的に眠る必要もありません。
椅子を少し倒す、アイマスクをする、タイマーをセットして目を閉じる。
そんな短い休息でも構いません。
午後にもうひと頑張りしたい日は「コーヒーナップ」
もう一つ、知っておくと便利なのが「コーヒーナップ」です。
方法はシンプルです。
コーヒーを飲む
→ すぐに15~20分程度の昼寝をする
→ 起きるころにカフェインが効いてくる
短時間の昼寝前にカフェインを摂取することで、目覚めたあとの睡眠慣性を軽減する可能性が報告されています。
出張や時差ボケで眠いとき、午後に重要な会議があるときなど、「今日は午後にもうひと頑張りしたい」という日の選択肢として覚えておくと便利です。
ただし、夕方以降のカフェインは夜の睡眠を邪魔する可能性があるので、時間帯には注意しましょう。
「時間が余ったら寝る」から「睡眠時間を先に確保する」へ
健康のために、運動する時間をつくる。
身体のために、食事を選ぶ。
将来のために、お金を貯める。
それと同じように、
明日の自分のために、睡眠時間を確保する。
そんな考え方があってもよいのではないでしょうか。
睡眠は、「今日やりたいことを全部やったあと、余った時間でするもの」ではありません。
夜にしっかり眠ることも、疲れた午後に15分だけ目を閉じることも、これからの自分が元気に動くための投資です。
まずは今夜、いつもより30分早くスマートフォンを置いてみる。
午後にどうしても眠かったら、10~20分だけ目を閉じてみる。
大きく生活を変えなくても、そんな小さなところから始められます。
睡眠は、削る時間ではなく「自分への投資」。
今日の30分が、明日の自分を少し元気にしてくれるかもしれません。
参考文献
Centers for Disease Control and Prevention (CDC). About Sleep. Updated May 15, 2024.
Watson NF, Badr MS, Belenky G, et al. Recommended Amount of Sleep for a Healthy Adult: A Joint Consensus Statement of the American Academy of Sleep Medicine and Sleep Research Society. J Clin Sleep Med. 2015;11(6):591-592.
Brooks A, Lack L. A brief afternoon nap following nocturnal sleep restriction: which nap duration is most recuperative? Sleep. 2006;29(6):831-840.
Reyner LA, Horne JA. Suppression of sleepiness in drivers: combination of caffeine with a short nap. Psychophysiology. 1997;34(6):721-725.
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