14. アメリカの歯科医療について

1. 総論

1-1) 一般歯科医(General Dentist)、歯科矯正医(Orthodontist)と口腔外科(Oral surgeon)の違い

日本と違い専門医制度がはっきりしているので、矯正、外科、根の治療、歯周病など専門医が町の歯医者として開業しています。それら専門医は普通の歯科治療はすることはないです。逆に一般歯科医は専門的な治療をすることは割とあると思います。日本はそんな感じですね。専門医はほかの一般歯科医からの紹介で患者さんを診ます。

1-2) それぞれが扱う疾患に関して

役割分担ですが、何か口の中に問題があれば、まずは一般歯科医を受診します。同じ状態でもその歯科医にとって得意分野であればそこで治療しますし、そうでなければ、もしくは少し難症例であれば、専門医に紹介ということになります。アメリカでは6か月ごとの一般歯科での歯科検診とクリーニングが、普通なので、その時に何か異常が見つかり、専門的な内容であれば、その時に紹介ということが一番よくあるパターンです。

必ずしも一般歯科医からの紹介がなければ、専門医にかかれないわけではありません。ただどこに行っていいのか判断がつかないのではと思います。また専門医は一般的なことをしませんので、そこから逆に一般歯科医に紹介ということはあります。例えば矯正をする前に、虫歯がある場合や、矯正中に歯のクリーニングが必要ですが、そういう場合、矯正医から一般歯科医に紹介となります。

1-3) 歯科保険について

日本と違い、会社あるいは個人契約であるため色々と種類があります。同じ治療に対してでも、保険会社によってカバーされたりされなかったりすることもあります。またカバーされる割合、カバーされる内容もカバー率も違います。

よく知っておかなければならないのは、アメリカなので保険もやはりビジネスです。同じ患者さん、同じ歯で、同じ治療内容でも、支払われないこともあります。契約で決まっていて、そこにサイエンスはあまりないです。例えば洪水の保険で、階段2段目まで水が来れば払うけど、1段目だと払わない、というのに似ています。ダメージとしては同じようであっても払われたり払われなかったりすることはよくあることです。そのルールは時々変わります。さらに複雑なことに、同じ保険会社内でも、審査をする人が違えば違う結果が出ることもあります。

また色々と細かいルールもあります(たとえばWaiting Periodといって治療内容によっては最初の1年間は、虫歯があってもカバーしてくれない保険もあります。よく日本から来られた患者さんで問題になるのはPre-existing conditionです。インプラントのクラウンは、ほとんどの保険会社で約50%払ってくれますが、日本で抜歯をしてこちらに来られた場合は払われないことが多いです。つまりインプラントが必要だとわかって、保険を買ったと思われるからです。ただしアメリカの保険は適応範囲は広く、日本では保険適応外の治療に対しても保険適応となることは多いです(保険会社により違いますが、矯正、上述のインプラント、歯と同色の陶材の詰め物やクラウンなど)。歯科医院によっては聞けばある程度調べてくれます。

また保険のタイプによっては、保険会社と契約している歯科医院にのみ受診できるという制約がある場合があります(HMO、DMOなどといわれています)。この保険は費用は一番低いですが、HMO、DMOでできる治療は、ほとんどの場合かなり質が落ちますので、さけた方がいいです。もし保険を購入される予定があり選択肢があるのであれば、PPO(またはDPO。DはDentalですがPPOの別の呼び方で内容は同じです)タイプの保険がお勧めです。同じ保険会社の中にPPOとHMOタイプがあります。PPOであればその歯科医がネットワークに入っていても入っていなくても、自分自身で選択した歯科医を受診することができます。ネットワーク内の歯医者とそうでない歯医者がありますが、ネットワーク内の歯医者の方が、治療費が低いというイメージはありますが、確かに例えばクラウン1本のFeeは低いですが、そのほかのチャージが増えるので、合計は同じになります。

保険についてもう一つ述べると、歯科保険と眼科の保険は医療保険とは完全に独立しています。医療の保険では、歯科治療はカバーされません。また海外旅行保険の歯科のカバーは事故のときのみ(つまり虫歯であればカバーされません)ということもあるので注意が必要です。

2.各論

私自身が日本とアメリカで診療をしてきた経験上、日本とアメリカの歯科医の治療の違いがよくわかります。また日本から来られた患者さんがよく疑問に思われて聞かれることなどを中心に、アメリカと日本の違いなどを書いていきたいと思います。

2-1) 歯科一般診療・検診

歯の病気は虫歯も含め症状がなかったり、見た目ではわからないこともあるので、年齢にかかわらず、症状がなくても6ヶ月に一回のチェックアップに一般歯科医(General Dentist)に行くことが大切です。歯科の保険があれば6ヶ月ごとのチェックアップ、レントゲン、クリーニングは一般的に保険により費用がカバーされます。子供の場合は歯が萌えはじめる時期(4-6ヶ月ごろ)が初めての歯科受診に適しています。さらに子供の場合は歯のエナメル質が薄く虫歯にかかりやすいため、通常の健診とクリーニングに加えて歯のはえかわりのチェックとフッ素塗布をするのが有効です。乳歯や萌えたばかりの永久歯の虫歯予防については、歯面の虫歯を予防するフッ素以外に歯のかみ合わせ面を封鎖するシーラントも有効です。

大人の場合の健診内容としては歯周病のチェック、歯と歯の間の虫歯のチェック、粘膜や舌(腫瘍などのチェック)の検査も重要です。

矯正に関しては一般的には11才ころですが、大人になってからでもはじめることもできますし、11才より早くからはじめる場合もあります。

2-2) 歯科治療および緊急の場合

一般歯科医による検診後、必要があれば予約を取り直し治療がなされます。初診時に治療費の見積もりや期間がわかります。また保険のカバーについて説明してくれるところもあります。また治療内容によっては専門の先生を紹介してもらうというシステムになっています。つまり緊急時および何らかの症状があった場合も、まず一般歯科を受診し、必要に応じて専門医への紹介という形が多いです。休日などどうしても歯医者が見つからない場合はEmergency Clinicでも応急処置はしてくれますが、そうなる前に歯科医を探しておくことは大切です。

またアメリカでは歯科医によって治療のレベルや方法が違い、歯科医師により治療費や治療方針も違ってくるので、受診する前によく考えておく必要があります。また、歯科医院によって保険への請求を病院側からしてくれるところ、自分自身でしなけばいけないところ、さらに病院側がする場合、有料かどうかなども事前に調べておくとよいでしょう。

今回の改正版にあたり、加筆を頼まれたので、私の失敗の経験をもとに付け足させていただきます。日本とアメリカの大きな違いは、アメリカの歯科医の技術のレベルや考え方に大きな差があるということです。これは歯科に限ったことではなく、医療やその他すべての事柄に当てはまります。家の近くに歯医者があるから便利なので行ってみようとかという日本的な考え方では、運が悪いとひどい目にあいます。そういう私も何年か前に簡単な検査のはずが、医療ミスのために4日間の緊急入院を余儀なくされましたし、緊急で来られた患者さんの中にも、取り返しのつかない状態になってる人も見ますし、私の友達のヒューストン生まれの歯医者さんですら、検査の後、ミスが原因で入院ということもありました。とにかくここは日本ではありません。歯科治療に限らず、誰かに聞いたりして、よく下調べをされて行かれるというのが、保険のことや、治療費以上に大切になるということはよく覚えておかれた方がいいと思われます。

3. 日本人に診てもらえる医療機関

General & Aesthetic Dentistry

Dr. Naoki Ned Shimizu

11757 Katy Freeway, Suite 960, Houston, TX 77079

電話番号:281-531-0710

https://www.wedesignyoursmile.com/

Telfair Oral and Maxillofacial Surgery
Dr. Kyoko Yamaji

13440 University Blvd. Suite 250, Sugar Land, Tx 77479

電話番号:832-500-4321

https://www.telfairoms.com/

Fort Bend Endodontic Specialits

Kevin H. Izu, DDS

3501 Town Center Blvd South, Sugar Land, TX 77479

電話番号: (281) 494-9033

<最終更新日:1/2023 清水直樹 歯科医>

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