8.アメリカの緊急時の対応(救急救命室での診療)について 

以前の医療システムの章で触れたように、予約なしでかかれる外来に、救急救命室、アージェント・ケア/ アキュートケア・クリニックやリテールクリニックがあります。救急救命室はすぐに命に関わるような重篤な状態を対応するための施設、アージェント・ケア/ アキュートケア・クリニックやリテールクリニックは日本の夜間休日時間外診療という位置づけです。この章では、救急救命室に行く場合について説明していきます。

1. 急病人、怪我人がでたら

命に関わる状態でなければ、かかりつけ医に連絡したり、アージェントケアやリテールクリニックで対応できる状態かまず調べてみることをお勧めします。ただ、すぐに治療を受けないと生死に関わると思われる場合は、迷わずに救急救命室に行くことをお勧めします。

2. 救急救命室に行くことになったら

全員が救急車で行くわけではなく、自家用車やタクシーで行く人もいます。大量に出血している、息が苦しい、胸がすごい痛い、意識がおかしいなどの症状がある場合は救急車を呼びましょう。

3. アメリカの救急車

①救急車の種類

運営形態によりパブリックとプライベートがあり、さらに内容的には、BasicとAdvancedの2種類があります。

パブリックの救急車 プライベートの救急車 
運営私営 
電話番号911イエローページの[Ambulance Service]欄やインターネットで探す 
病院の指定 通常、家やその事故発生地点から一番近い病院に送られるので、病院の指定はできない 可能 
待ち時間 10~20分と比較的すぐに来る 場合によって、結構待たされる 
料金地域により、無料の所も有料の所もある 有料
保険救急車代はカバーされる場合が多いが、一応保険会社に確認しておくと良い 救急車代はカバーされる場合が多いが、一応保険会社に確認しておくとよい 

救急車の種類

Basic Support Ambulance Advanced Life Support Ambulance 
これは、普通の救急車で、心臓蘇生や酸素吸入等、基本的な救急設備を備えているが、一口で言えぱ人命に危険のない病人やケガ人の運搬車 この救急車は、”動く集中治療室” と考えるとよい。病人やケガ人を病院に運搬するだけではなく、救急車の中で高度な技術を駆使した救命や治療が開始される。 
※なお、どちらの救急車が必要かについては、救急車側で判断します。

 ②救急車の呼ぶための電話のかけ方

・パブリックの場合 →911

・プライベートの場合 →それぞれの電話番号

③電話がつながったら

  1. I need an ambulance.(救急車をお願いします)と言います。 
  2. 落ち着いて、オペレーターの質問に答える形で、氏名、住所、電話番号等を、的確に手短に伝えてください。 
  3. 向こうから、病状やケガの様子等を間いて来ますが、この際難しい医療用語は 不必要ですので、簡単な言葉ではっきり伝える事が大切です。 
  4. 必要ならば、救急車が到着するまでの間にできる応急処置を教えてもらってください。 
  5. Please hung up(電話を切って下さい)と指示があるまで、絶対にこちらからは電話を切らないことが重要です。 

④救急車が到着するまで 

(1)患者を安心させて、必要ならば、教わった応急処置を行いましょう。 

(2)病院に持参する物を用意してください。 

            ・薬のボトル(服薬している薬のボトルをそのまま持参) 
            ・プライマリーケアドクターの名前・電話番号・救急用電話番号 
    ・保険のカード
    ・クレジットカード (アメリカの保険の有無関係なく)
〇病院には、貴重品や現金は出来るだけ持参しないほうが良いでしょう。
      但し、家の鍵は忘れずにかけて持って行きましょう。
     〇人数に余裕があれば、救急車を迎えに出てください。表通り、アパートの前など
      目立つ所に立ち、救急車を誘導すると到着がスムーズになります。

⑤病院の指定

通常は、かかりつけ医が提携している病院や近くの病院が優先されます。

⑥救急車の費用

アメリカの救急車は基本有料です。誰かが自分の了解なく呼んでくれたが自分は必要ないと感じた場合や、救急車が来たときには治っていたという時には自己責任で乗ることを拒否することもできます。

4. 救急救命室で

受付をすると、看護師がトリアージをし、どれくらい早く診察する必要があるか判断します。救急車で来院してもそこまで急ぐ必要がないと判断されると数時間待たされることもあります。

救急医は通常、これから診察する患者について何も知りません。以下のことがよく聞かれます。

(1) 病気やケガの状態一発生から現在まで 

(2) 現在治療中の病気の有無。服薬状況(薬のボトルを見せる) 

(3) 病歴、家族歴 

(4) 薬物アレルギーの有無 

(5) 破傷風ワクチン(tetanus)の最終接種日(切り傷、刺し傷、火傷等の外傷の場合) 

違う病院の電子カルテと連携していることもあるので、かかりつけ医やUrgent Careの医師など自分の病状を知っている医師がいれば、その旨を伝えて診療記録が見られるかチェックしてもらうとスムーズに進むかもしれません。

<最終更新日:2/2023 福田由梨子>

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